“Every family has bad memories.”
The Godfather Coda: The Death of Michael
Corleone
1990,2020.
フランシス・フォード・コッポラ(Francis Ford Coppola)の
『ゴッドファーザー(The Godfather )』シリーズ3編を見直した
『ゴッドファーザーPARTⅢ』は2020年に再編集され
『ゴッドファーザー 最終章 マイケル・コルレオーネの最期』
(The Godfather Coda: The Death of Michael
Corleone)
として
新ヴァージョンが公開されたが
こちらの新編は見ていなかったので
2020年時点におけるコッポラの『ゴッドファーザー』シリーズの結論を
受けとめ直す結果となった
『ゴッドファーザー 最終章 マイケル・コルレオーネの最期』の終わりは
複数の殺しがふんだんに盛り込まれ
映画のアクション性の効果は強く出されていたが
すこし盛り込み過ぎかもしれない
なにより映画内に流す最後の音楽を
ピエトロ・マスカーニ(Pietro Mascagni)の
『カヴァレリア・ルスティカーナ(Cavalleria Rusticana)』の
間奏曲にしたところが
現代の映画の音楽使用法としては
ちょっと安易なような
すこし甘ったるいものとして受けとめられないでもなかった
『カヴァレリア・ルスティカーナ』は
作り始めたマスカーニが
なかばまで書いてみたものの
よく思えずに原稿をゴミ箱に捨ててしまった
といわれる
妻がそれを見つけて
書き続けて完成させるように
励ましたらしい
ゴミ箱から妻が拾わなければ
最高の間奏曲といわれるこれも
今のように
方々で演奏されることはなかっただろうし
『ゴッドファーザー 最終章』の音楽も
べつのものになっていただろう
名演ばかりで
選択する必要さえないものの
Semyon Bychkovの演奏などは
好きなほうだ
Mascagni - Cavalleria rusticana - Intermezzo Sinfonico | Semyon Bychkov |
WDR Sinfonieorchester
https://www.youtube.com/watch?v=qggeBAL7Yrc
あえて
ヴァイオリンだけで演奏するのもいいもので
ブレイズヘアの弓代星空の演奏など
なかなかいい味を出している
『カヴァレリア・ルスティカーナ』より間奏曲 マスカーニ Cavalleria Rusticana "Intermezzo" Pietro Mascagni【弓代星空】
https://www.youtube.com/watch?v=t10T5WTzK2I
しかし
個人的にもっとも好きなのは
リム・ケクティジャム(林克昌Lim
Kek-tjiang 1928-2017)が
台湾の長栄交響楽団を振った時の演奏である
イタリアのマスカーニの曲が台湾で最高度の演奏をされるのは
なかなか興味深いことでもある
台湾を代表する指揮者のリム・ケクティジャムは
長栄交響楽団(Evergreen
Symphony Orchestra)の
初代音楽監督でもあった
Pietro Mascagni: Cavalleria rusticana - Intermezzo
林克昌Lim Kek-tjiang
https://www.youtube.com/watch?v=7OvsVSWB4TI
マスカーニは音楽の天才で
20歳前から交響曲もオペラもカンタータも作っていたが
27歳の時の1890年に『カヴァレリア・ルスティカーナ』を作曲し
世間はこれ一曲で彼のイメージを固定させてしまった
そこがいくらか不幸ではあったが
ともあれ作曲家としても指揮者としても大成功し
ロッシーニ音楽院院長にも就任したのだから
幸福な音楽家であったというべきだろう
マスカーニの不幸は
人生の最後に
非音楽的なところで
世俗的名誉を求めたところで訪れてくる
スカラ座の監督の座を狙った彼は
ファシスト党政権が誕生したところでムッソリーニに接近する
イタリアが降伏した際に
マスカーニの全財産は没収され
81歳になっていた彼は
1945年8月2日に
不名誉のうちにローマのホテルで死去する
友人でもありライバルでもあったプッチーニ(Puccini)が
ヘビースモーカーであったために罹った喉頭癌の手術後
合併症で1924年に65歳で急死していたのを思い出すと
長生きはしたものの
はたしてマスカーニの晩年は幸せだったのか
どうか
考えさせられないでもないが
こういうところまでこちらの意識に取り込みながら
『ゴッドファーザー 最終章 マイケル・コルレオーネの最期』を見ると
映画の最後の場面で
マスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』の
間奏曲を出してくるところに
遠い夢のような
甘くもあれば
苦くもある
やさしくも痛切な味わいを
あらためて感じさせられるものでもある
ところで
『ゴッドファーザー』三部作にわたって
最も中心的な存在マイケルを演じたアル・パチーノ(Al Pacino)は
シシリア島(Sicilia)からの移民の末裔で
あの映画の主役に抜擢された運命のようなものも
背後で動いているように思える
シチリア島には
フラットキャップの帽子があって
島を象徴するものとされているが
これがなんと
コッポラ帽(Coppola cap)と呼ばれている
coppolaというのは
英語のcapが転じてできた語らしいが
シチリア島出身者の子孫でもないフランシス・フォード・コッポラが
あえて『ゴッドファーザー』三部作を作ることになっていく
別の面の宿命のようなものも
ちょっと感じてしまう
シチリア島との
現代の映画俳優や映画監督の関わりなど
さほど意味のない単なるゴシップに過ぎないとは言えるが
古代ギリシャの哲学者のプラトン(Πλάτων)が
シチリア島と大いに関わりがあったのを思い出しておくのは
なかなか面白い
BC387年のこと
40歳のプラトンははじめてシチリア島(当時はシケリア島)を訪れ
シュラクサイの僭主のディオニュシオス1世から歓待された
僭主の義弟で20歳だったディオンはプラトンに感銘を受けたようで
多大の影響を受けたといわれる
僭主のディオニュシオス1世とも政治論をしたようだが
僭主政についての意見を求められた際
たぶん馬鹿正直に批判をしてしまったのだろう
ディオニュシオス1世の不興を買い
奴隷として売り飛ばされそうになった
というのは有名な話
プラトンはその後
60歳の時
ディオニュシオス1世が倒れてディオニュシオス2世が王となった時にも
二度目のシケリア島訪問も行っており
さらに
62歳の時
ディオニュシオス2世に招かれて
もう一度
シケリア島訪問をしている
プラトンに心酔していたディオンが
師の政治哲学に沿うように
ディオニュシオス2世を動かそうとしたようだが
うまく行くことはなく
ディオンとディオニュシオス2世は政治的な確執に入っていく
これにプラトンも巻き込まれるかたちになり
彼が70歳になったBC357年には
ディオニュシオス2世と戦うべくディオンはシケリア遠征を行う
プラトンが80歳で死ぬのは
BC347年だが
こうした古代ギリシャの出来事を思い出すと
『ゴッドファーザー』三部作は
いっそう
味わいを増してくるように
見える