2020年3月23日月曜日

わたしはまだ見ていない



イタリア・ロンバルディア州の疫病被害のニュースを見ていたら
クレモナの惨状も目にすることになった

ヴァイオリン製作のストラディヴァリや
その兄弟子のグァルネリやアマティの街で
イタリア好きの友人たちや知人たちは
いつも遠くを見はるかすような目をしながら
クレモナへの旅を語ったものだった

一二〇〇年代に建てられたイタリア最高の尖塔があり
そのわきには街の大聖堂があって
そこのオルガンはかつてモンテヴェルディが弾いたオルガン
神に降りてきてもらうためのものが音楽なのだと
クレモナの人びとは考えているんだよと
そこに行ったことのないわたしは聞かされてきた

1628年の飢饉にもやられず1630年の黒死病流行も避けられたのに
今回ばかりはやられてしまったなと
イタリア料理をいろいろ教えてくれながら
語ってくれそうな友たちも
もう疾うにいなくなってしまっている2020年

旅せよ、あのあたりへと
あんなにも勧められてきたのに
ロンバルディアを流れアドリア海に注ぐ美しいポー川を
わたしはまだ見ていない




ぎこちなくても




あの木はなんという木?
と思いながら
森を抜け
林を
いつものように
そぞろ
歩いて行く

名を知ったとして
わかるべきことがわかるわけでは
ないのに

あの木はなんという木?
と思うのは
たぶん
あいさつのつもり

ずいぶん
ぎこちなくても





黄蝶



山吹の花々の
あの黄色に誘われるように
舞っていた
黄蝶

なんという
自然のたくらみ!

なんと完璧な
瞬間!





いつも告げられている




早春の死のむこうには
やはり
春のとりどりの花々が咲く野辺があり
川沿いがあり
まだ寒さの残る山々の細道や
頬の薔薇色の娘たちが
いっぱいの笑顔を浮かべながら
なにか楽しいことを告げようと待っている
頑丈な丸太づくりの家々が
永遠のふるさとのように点在しているだろう
いつもいつも
もっといいことはこれから来る
それに
ものごとには
終わりというものはないのさ
と
むこうに行った人も
こちらに残っている人も
いつも
告げられている






空の色のあわい移りゆき




春の花々の咲くころに入って
このごろ
空の色のあわい移りゆきがうつくしい

どれだけのひとが
この贈り物を
すなおに受け止めているだろうか

空をとおく見はるかして
胸の空気ばかりか
こころの気まで
すっかり放ってしまって
からっぽになって
青も水色も灰色も紫も桃色も白も同時にそこに
あるような
あのあわさに
なり切ってしまって






花からもしっかりと見られているのでなければ




桜が咲きはじめている

もう満開のようになっている木もある
まだほとんど咲いていない木もある

ひとりひとり
異なった宿命を与えられている人の世のようだとも思いながら
桜の並木づたいに歩いていく

花を見る
花を愛でる
などと
平気で言ってしまいがちだが
見ることや
愛でることは
やはり
ほんとうにむずかしい
希少な瞬間に恵まれなければ
かなわない
ことでもある

花を見るとき
花からもしっかりと見られているのでなければ
見たとはいえないのだろう
と
この頃はよくわかっている

花がこちらを見てくれるまでには
ずいぶんと時間がかかり
こころの沈黙もかかる

こちらのこころの沈黙だけが芳香を発して
かれらの注意を引きよせる
沈黙が底知れぬ淵を出現させ
そこから花々を惹きつける芳香がのぼる

桜に見られたことはあるか

どのくらい
あるか

あったか?

それほどまでに
どのくらい
“居ない”
ことが
できてきていたか




2020年3月19日木曜日

しばらくは断るほかはない


  
飲まないかと誘いがあったが
やっぱり
断ってしまった
ウィルスの無症状の感染はかなり広まってるはずなので
あらゆる飲食店の閉鎖空間があぶない
店の人にしろ客たちにしろ
どんなに善意の人たちだったとしても
それで大丈夫となるような甘い話ではない
タチの悪い長引く風邪のような症状でじぶんは済むにしても
まわりに移してまわることになるのは避けられないはずだから
やっぱり
しばらくは断るほかはない

もっとも
日本での場合
4月にはウィルスのやつ
かなり
やる気をなくして
闇の世界に引き上げていってしまうだろう
きっかりと退散するわけでもないから
5月頃までかかるかもしれないが

新型コロナウィルスっていうのは
根気のないやつなので
そこが
こちらの戦いどころになる
ウイルスの学者でもないぼくが言っても意味ないし
いかにもいい加減なデマ屋みたいだが
敵の本質を見抜くのに長けた能力者なので
ちょっと言わせてもらっておく

ワアッと騒いで
もうちょっと頑張れば制覇できるだろうに
今回のウイルスのやつって
いまひとつ
継続力と忍耐力がない
どうもウイルスって連中には
ここのところが
けっこう共通した性質なのらしい
彼らは指令を受けてしばらくの期間だけワアッと騒ぐ連中で
しばらくすると
兵站が断たれてエネルギー切れになってしまう
これはまったく科学的な話でなくて
完全なトンデモなので
絶対に信じないようにしてほしい
ぼくひとりだけの世界把握の直観的な装置による見立てだから

ところが
海外は大変で
ただ事では済まない
どうしてこんな悲劇になってしまうんだろう
と見続けることになるだろうが
カルマ
って
こういうことなんだよ
バチがあたる
って
こういうことなんだよ
何十年どころか
何百年経ってから
孫の孫の孫の孫の…代に祟る
って
こういうことなんだよ

すべてには因果関係がある
って
科学的思考の原理だよね
そう
すべてには因果関係がある
原因のない出来事など
絶対に起こらない
それを極大にまで拡張してものを捉え考えれば
バチは科学となる
カルマは科学となる
誰にでも見える
誰にでもわかる
仏陀にぜんぶが見えていたようなぐあいに

そこまで行かなければ
人間
と呼ぶにふさわしい人間は
まだ
出現できない
科学
と呼ぶにふさわしい科学は
まだ出現できない

地球が教えてくれているじゃないか
運命が教えてくれているじゃないか