2024年7月1日月曜日

東京の七月


 

 

六月三十日は夏越しの祓ということで

近所の神社三社に行ってきた

 

一年も

すでに半分が過ぎて

人間はだれもが

たっぷりと汚れを負っているそうなので

それを六月の終わりに祓っておこう

ということらしい

 

世界を見わたせば

いちばん汚れていそうな者たちほど

汚れを祓ったりはしないので

小心で自己罪障意識の強い者ばかりが

夏越しの祓にも

わざわざ出かけていくのか

 

有名で人気のある東京大神宮は

やはり混んでいて

ずいぶん並んでもいたので

茅の輪くぐりもせずに

脇から感謝礼拝を軽くした

この神社の茅の輪は

すでに何日も前にくぐったので

大丈夫といえば大丈夫

 

うちの土地神の神社のほうは

茅の輪なども作っていないのではないか

と思いながらも行ってみると

立派な茅の輪がちゃんとできていて

しかも地元の者しか知らない神社なので

参詣者がひとりいただけだった

茅の輪くぐりをし礼拝もゆっくりできて

これはこれでよかった

 

いちばん有名な神社の靖国神社には

茅の輪は作られていなかった

日本国家守護のために死んだ霊を祀る此処では

そういうことはしないことになっているのか

よくわからないが

いつも混んでいるのに

なぜかこの日は人が少なかったので

ふつうに神殿で礼拝をした

 

いま靖国神社で目に入ってくるのは

十三日からの「みたままつり」の準備のようすで

参道の両側にパイプ材が組まれて

黄色い提灯をたくさん付けるための

電球ソケットがすでにいっぱい下がっている

二週間後の土曜日から四日間続くので

だんだんと雰囲気が出来上がってくる

 

ほんとうに七月に入ると

東京はいろいろな夏の祭りや催しで

毎週毎週いそがしくなっていく

ぜんぶを見てまわることはできないが

ある程度は見に行ってみるかどうかで

東京の人間かどうかがわかる

東京のアイデンティティを持っていない者は

地元の花火に出かけるぐらいだろうが

東京人たる意識を持つ者は

けっこういそがしくまわって歩く

葵祭や祇園祭の京都に負けない東京魂は

こういうところでの浮かれぐあいで発揮される

 

まずは六日から八日の入谷の朝顔まつり

次に九日から十日の浅草のほおずき市

そうして十三日から十六日のみたままつりとなり

近所のことでいえば

二十四日から二十五日には千鳥が淵で灯籠流しがある

うちから十分の靖国神社には

たぶん今年も毎晩出かけることになるだろうが

入谷や浅草にも一日くらいは

ふうらりと歩きに出ることになるだろう

 

燈籠流しの夜は

馴染みの落語家の寄席と重なるので

どうしようかとちょっと悩むのだが

雨が降らなければなんとか一日ぐらいは

千鳥が淵に見に行けるかもしれない

 




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