2026年6月3日水曜日

いま抱かれなばにほひたつべし


 

 

いい雨が降っている

 

 

こころはやわらぎ

たとえば

恋の近づきを

やわらかく

すなおに受けとめうる

水辺の土のように

はじまりの頃へ

戻っていく

かのよう

 

止まず

やみがたく

ひと思ふなり

 

という

藤井常世の歌などが

雨の季節には

しめやかに

いつのまにか

戻って

きている

 

いちにちを降りゐし雨の夜に入りても止まずやみがたく人思ふなり

 

恋するひとたちを

潤わせて

降りやまない雨

夜になってもやまない雨に

世界はしずかに

また

変貌していく

 

 

あるいは

また

そんな雨のやんだ後

大樹の下での

夜の

逢瀬の際

つめたい針のように

落ちてきて

感官を驚かせる

しずく

一滴

あるいは二滴

数滴

 

身を刺すは若葉のしづく(づく)のこゑいま抱かれなばにほひたつべし

 

「にほひたつ」のは

いちども表に出てきたことのない

我という仮面の底の

未知の

不可知の

しかし懐かしくもある

それ

かもしれない

 

 

思い出す必要もなく

繋げる必要も

まったく

ないが

響いてきてしまう

ランボー

『永遠』

 

 

見つかった。

なにが? ―永遠が。

 

Elle est retrouvée.
Quoi ? – L’Eternité.

Arthur Rimbaud L’Eternité

 



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