引っ越してから
もう
9年ぐらいになるのか
以前の住まいのほうに借りてある
トランクルームを
そのまま
借りっぱなしにしてあるが
手放そう
手放そう
と思いながら
まだ整理ができておらず
借りっぱなし
いまの住まいから
30分ほどで行けるのだが
いざ行こうとなると
時間や仕事の調整も必要になるので
そう容易には行けず
9年ほどほったらかしになった
借りたのは
以前の住まいに
さらにそれ以前の住まいから越した時の
1年後なので
16年ほど前になる
そこには
死んだエレーヌのところにあった本も
いっぱい収めてあって
整理しようにも
手放そうにも
段ボール箱から出し直して
いちいち見直して
他の箱に入れ直して
どれを手放すか
どれを手元になお残すか
考えないといけない
これが億劫なので
なんとなく
30分ほどの距離なのに
行く気が薄れてしまう
きょうはひさしぶりに行ってみて
段ボールを3箱たたみ
未整理の箱があと16箱というところまで
たどり着いた
手元に置くべき本は
スーツケースに入れて持ち帰ってくる
途中メトロに乗るので
会社員が帰り出す夕方の17時頃までには
メトロに乗ってしまっていたい
持ち帰るのはいつも
数十冊から100冊ぐらいだが
まったくこの労働は
蔵書5万冊になってしまった報いで
ただただ愚かな話と思う
それでもきょうは
いちばん奥に埋もれていた箱を開けて
16年ほど触れなかった
ミラレパの経典のフランス語訳や
カルロス・カスタネダの本ぜんぶを持ち帰れたのは
幸いだった
トランクルームへ向かう途中の
マンションの日当たりのいい植込みで
東京では今どきめずらしく
元気そうな野良猫が歩いているのを見れたのも
幸いだった
重くなったスーツケースを引いて
ふたたび駅にむかう時
小学生のメガネの女の子から声をかけられ
「すみません! いま何時ですか?」
と聞かれたのも
東京では今どきめずらしかった
見知らぬ人とはしゃべってはいけない
などという
嫌人性助長教育が公然と奨励されている現代日本なので
見知らぬ大人に時間を聞く子どもなど
絶えて絶滅してひさしいものと思っていたのだから
数字が太字で表示される
カシオのGショックのデジタル時計をつけているものだから
時刻は正確に分まですぐに見てとれる
「いま4時46分!」
と間髪を置かず答えてやったら
あまりに即座に分まで返されたものだから
女の子はちょっと驚いて
口をポカンと開けたけれど
すぐに
「どうもありがとうございました」と
初級日本語の教科書のような返答をしてきた
こんな女の子もいて
野良猫もいて
以前住んでいたところあたりは
のんびりとした初夏の
ちょっと暑くなり出した
明るい夕方であった
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