2025年5月21日水曜日

いつ戦争は終わるのか?

 

 

 

本のおもしろいところは

そして

困ったところは

ひとたびどこかのページを開くと

こちらの意識が変容し

次元が変わり

世界も宇宙も豹変し

問題意識も

生の進む先も

すべて

変わってしまうところだ

 

16年ほども開けなかった

本の箱の奥から出した一冊に

パスカル・キニャールの『アメリカによる占領』*があった

 

この本は読んでいなかった

 

白水社の「ふらんす」で

フランスの新刊本の紹介をしていた頃

毎月新刊をたくさん買い込んで

片っぱしから読んで

どれかひとつを選んで記事を書いたものだったが

その時に買ったものの

読まずに済ましてしまった一冊だった

 

冒頭はこんなふうに始まる

 

いつ戦争は終わるのか? オルレアンの人間はケルト人に支配され、ゲルマン人に支配され、古代ローマ人に支配され、かれらの12の神々によって五世紀にわたって支配された。さらにヴァンダル人に支配され、アラン人に支配され、フランク族に支配され、ノルマン人に支配され、イギリス人に支配され、ドイツ人に支配され、アメリカ人に支配された。女の目のなかに、兄弟たちが突き上げる拳のなかに、怒鳴る父の声のなかに、社会的な個々のつながりのなかに、敵であるなにかがいつもあった。奪い取ろうとしてくるなにか。殺そうとしてくるなにか。ぼくらがする努力の目的は、幸せになることではない。温くして老いていくことではない。苦しまずに死んでいくことではない。ぼくらの目的は、なんとか生きのびて夕方を迎えられることなのだ。

 

1994年に書かれた本だが

2025年の現代にこそ

読まれるべき本かもしれない

 


 

*Pascal Quignard  l’Occupation américaine  Edition du Seuil, 1994

 




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