太陽王とも呼ばれた絶対君主
ルイ14世の晩年は
まさに太陽王と呼ばれていたがゆえに
あまりに悲惨で
彼の肉体的な不具合をちょっとでもふり返ると
この絶対君主の
というより
老い衰えていく時の人間全般についての
悲惨さしか待っていない終焉というものを
つくづく考えさせられる
歯が悪かったのは有名で
いつも歯周病の悪臭が周囲に漂っている
侍医アントワーヌ・ダカンは
歯はすべての病気の温床だから歯さえ抜けば健康になる
というとんでもない医学論を主張していたせいで
(もっとも末期的な歯周病ではその考えも正しいか)
王の歯はぜんぶ抜かれてしまった
抜歯は12回も行われたという
歯といっしょに口蓋の半分も取ってしまったというのだが
想像するだに恐ろしいではないか
麻酔のない時代だったので
抜歯はすべて無麻酔で行われた
消毒にしても
真っ赤に焼いた鉄の棒で歯茎を焼いて“消毒”した
こんな手術を受けて歯をぜんぶ失った彼は
8時間以上も煮込んだ
ぐだぐだの鳥肉しか食べられなくなったという
胃腸も悪かったようだが
そんな口内と胃腸の状態でも
大食漢であり続けていたそうで
年がら年中下痢ぎみで
大便というか水便というかを
つねにオマルにぶちまけ続けていた
衣装にも当然水便は漏れるので
ルイ14世の周囲では便のきつい臭いが漂っている
周囲に集まる臣下たちは香水を浸したハンカチを
いつも鼻にあてるようになった
便をしながら命令を発するのも普通になり
椅子には排便用の穴を開けておくようになり
このスタイルはルイ14世スタイルとして
臣下たちも真似するようになった
足は痛風で痛み続け
膀胱には結石が溜まり
肛門は崩壊していて
性器は淋病で蝕まれている
女漁りにあけくれた王も
こんな状態になっては
さすがに生活を変えざるを得なくなったが
マントゥノン夫人は真摯に面倒をみたという
王も夫人も信心深くなったそうだが
悪魔がある人間を利用するのをやめて見捨てると
その人間は信心深くなる
という格言がフランスにあるのを
よくよく忘れないでおこう
歳をとって信心深くなった連中を簡単に認めたりすれば
馬鹿をみること必定である
20歳の頃に大病をして
ルイ14世は毛髪のほとんどを失ってしまっていたともいわれる
彼を描いた絵画などでは
立派な髪の毛の盛り上がりをしているのが見られるが
あれはかつらで
もともと160センチ程度の背丈だったのを
下駄をはかせて見せるのに役立った
ハイヒールを好んだのも当たり前だろう
太陽王が『オースティン・パワーズ』のDr.イーブルのようでは
やっぱり見栄えがよくないのだ
https://www.youtube.com/watch?
1715年に
ルイ14世は足に壊疽が広がって死に至るが
腐敗した自分の肉体の悪臭の広がる中で
けっこう平静を保っていたようである
王のかたわらで涙する者たちには
「朕が不滅だとでも思っておったのかね?」と
なかなかブラックなユーモアを開陳したのだとか
フランス革命の最も過激化した1793年
ブルボン家の墓所が開けられた際に
ルイ14世の棺も暴かれたが
遺骸の形状は見分けがついたものの
壊疽が全身を食い尽くしたようになっていて
インクのように真っ黒になっていたという
この時の墓荒らしの際の
他の王侯の遺骸についての情報も
ついでに少し加えておこう
ルイ14世の父ルイ13世の遺骸はよく保たれ
特徴のある髭の形状によってしっかりと識別されたという
ところが祖母のマリ・ド・メディシスや
母アンヌ・ドートリッシュや
妻マリ・テレーズ・ドートリッシュの遺骸や
くわえて息子のルイの遺骸も
「液状腐敗物」でしかなかったという
それらは「すさまじい悪臭を放つ黒く濃い蒸気を放ち
酢とおしろいでなんとか追いやった」という
この時暴かれたブルボン家の遺骸は共同墓穴に投げ込まれたが
マリ・ド・メディシスやアンヌ・ドートリッシュや
マリ・テレーズ・ドートリッシュや息子ルイたちの
この「液化した腐敗物」については
投げ込むというより流し込むという表現のほうが
ふさわしかったそうである
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