主なる神はこう言われる。
災いに続く災いが来る。
終わりが来る。
終わりが来る。
終わりの時がお前のために熟す。
今や見よ、その時が来る。
エゼキエル書 7・5-6
床屋のおやじが
4月26日の予言のはずれの話をした
知りあいが
4月26日に飲み会があったのだが
この日に大震災が起こるという予言を聞いて
それを真に受けて主催者が中止した
そうしたら大地震など起こらず
参加予定者たちから非難囂々となった
こんな話である
そんな予言があるなら
わざと飲み会を開いてみたほうがおもしろいのに
などとしゃべりながら
髪を切ってもらった
飲み会をしていたら
ほんとうに大火事に見舞われた
という話もあると
床屋のおやじが続けた
飲みはじめて20分ほどで
ようやくビールのジョッキを一杯飲み終えるかどうか
というところで奥から出火し
支払いはいいから急いでみんな逃げてくれ
と店主が言うので
あわてて荷物を抱えて逃げ出したが
どうせなら
一時間ぐらい飲んでから出火してほしかったな
という笑い話である
飲み会での大地震
ということなら
わたしも知りあいから聞いたことがある
仙台出身の大学生から聞いた話だが
3月11日
東京から地元に戻っていて
ひさしぶりに高校時代の仲間で集まって飲もう
ということになり
会は夕方から始まるのだが
参加者たちは
ゆるゆると昼過ぎから
会場となっている居酒屋に集まっていく感じだった
仙台あたりの人間は
飲み会などをする場合
きっちりと時間を定めずに
ひとりひとり
適当な時間に集まっていくのが習慣らしい
店で飲み出していると
14時46分に例の大地震が起きた
揺れに揺れて
大変には違いなかったが
怪我をするでもなし
みな無事に切り抜けて
とにかくはやく帰宅しようと
別れ別れになった
家に帰る途中
大きな川に沿ってしばらく歩くのだが
いつもは水を湛えている川から
すっかり水が無くなっていて
これも地震のせいなのだろうか?
ヘンだな
と思いながら
歩き続けていったのだが
知られているように
この後であの大津波が
川を遡り
町を飲み込みながら
押し寄せてくることになる
この大学生は
津波と火災のせいで
家には帰り着けなくなってしまい
帰れるようになったのは
なんと一ヶ月後のことだったという
いろいろと細かいことを聞いたが
「たいへんだったね」
とこちらが言うと
「たいへんでしたよ」
と返してくるだけで
人間というのはどんな大変な経験をしても
結局しばらくしてから語る時には
「たいへんでしたよ」
で済んでしまうものだということを
この時に再確認した
ところで
4月26日に大地震が来る
と予言したのは
沖縄のユタだと自称する金城保で
YouTubeの人気番組のコヤッキースタジオでも
紹介されたものだから
ずいぶんと世間に拡散されたものだった
金城保はこの日の前に行方をくらまし
さて予言どおりになるかどうか
と都市伝説界隈がざわめいているうちに
やっぱり嘘でした!
という決着がついたことになっている
わたしはあらゆる都市伝説やスピ系情報を網羅して見聞きしている
昨年からこの金城保の予言は知っていたが
日付を細かく言ってしまうなんて
どうしちゃったのかな?と訝しく思っていた
予言というのはどんな霊能者にとっても
日付までは当てられないのが通例で
ひと月程度の余裕をもって予言するほうが賢明である
逃げ場をそんなふうに作っておくのが
いわゆる予言業界のお作法だというのに
この金城保はなにをトチ狂ったのか…と思わされた
ともあれ
大地震が来るぞと予言されているような日には
勇気をもって
というか
満を持して
というか
飲み会であれパーティーであれ遂行すべきである
本当に大地震が起これば
それはそれで得がたい楽しいアトラクションとなるし
代金を払わないで堂々と店を後にもできる
大地震で揺れる店で怪我をしたり死ぬような者は
ひとりで家にいても死ぬものだ
1500人の死者が出た1828年の新潟三条の大地震の時
良寛が次のような有名な言葉を言った
災難に逢う時節には災難に逢うがよく候
死ぬ時節には死ぬがよく候
これはこれ災難をのがるる妙法にて候
何月何日にどんな災害が起こる
と予言するのは
予言と実現のあいだにある微妙なクセを理解していないがゆえに
愚かだが
「災難に逢うがよく候」
とでも思って腹を決めるほかない今年という「災難に逢う時節」
にあっては
良寛のこの覚悟をよくよく自分のものにしていくほかない
多くの死が当たり前にまわりに発生し
救いようもなく
次々と人びとが死体になっていくさまを
平然と見ていられる心根を磨いておいたほうがいい
死体の腐っていく臭いには閉口するだろうが
どこにも逃げようがないとなれば
それにも慣れるほかないだろう
日本はガザのようになる
もう逃れようはない
どうにか方向を変えられる機を
この国の怠惰な人間たちはすべて逃し
もう押さえられない運命の津波に飲まれていくばかりである
わたしはYouTube予言者たちとは違うので
日付などを事細かく言ったりはしないが
これから起こっていくことは
すでに空気のなかに漂っているのが
わかる人にわかっているはずだ
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