ときには
北村太郎のように
黙って
ベンチに座っていてみたい
ときには
北村太郎のように
ゆっくり
腰を上げていったりしたい
ときには
北村太郎のように
すなおに
でも
簡潔に
書きとめるだけに
したい
もう
特別な表現など
捏造しようとしたり
せず
できあいの
借り物の
表現ばかりで
いいから
ひょいと出てくる
表白を
そのままに
ひょいと
出てくるままに
ここにある時間は、いったいどこに経っていくのか
秋は、とっくに事を終わらせてしまっていて
ぼくに戦慄なんかない
白髪は死の花
ゆっくりと、腰を上げる
(北村太郎 『ベンチにて』 in 『路上の影』1991)
0 件のコメント:
コメントを投稿