数ヶ月前に死んだ人にも
いくつもバッグを貸していた
どれも
高価なバッグではないが
それでも
ひとつひとつ
一万円前後はしている
どれもまだ新しく
きれいだが
あまり使っていないものを貸したので
乱暴に使われてもかまわない
使いつぶしてもらってかまわない
そう思って貸している
相手が死んでしまったが
貸したバッグは
まだ使える状態で残されたし
いくつかは
ほとんど使っていない状態でもあったので
そのうち持ち帰ろうと思った
まだ持ち帰ってもいないのに
気持ちのなかでは
しばらく遠出していたバッグたちが
家に戻ってくるのを感じる
仕舞う場所はどこにしようか
その後もべつのバッグが増えたし
置き場所には困るかもしれない
などと考える
気持ちのなかでは
戻ってきたバッグたちのイメージからは
貸した先の人の雰囲気や
思い出などがすっかり消えてしまっていて
貸す前にわが家に置かれていた頃の
真新しい雰囲気や
買おうかどうしようかと店で迷って
買うことにした瞬間の
心のときめきめいたものだけが
戻ってきている
物のちからか?
じぶんで店をまわって探し出し
時間を多少はかけて
神経を費やして
手に入れた品物と
他ならぬじぶんだけの
かかわり方の
ちからか?
バッグを貸した相手は
すっかり
消えてしまっている
死んだ人がどう使ったか
とか
どう受けとめたか
などは
すっかり
消え失せて
わたしがわたしの決断で買ったバッグたちが
時間など
まったく経たなかったかのように
戻ってくる
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