11月に亡くなった嵐山光三郎の『文人悪食』は
楽しくも便利な本で
ちらちらめくり直していると
いつのまにか時間が経ってしまう
こんな本は
他には
小島政二郎の『鴎外・荷風・万太郎』(1965)
ぐらいのものではないか
胃が悪いのに
漱石の甘いもの好きや
こってりした洋物好きはおもしろく
イギリスから帰国した後の日記に出てくる食べ物を
嵐山光三郎はうまく拾って
紹介してくれている
京都二條の橋のたもとの西洋料理
京都鍵屋の西洋菓子
観世落雁
月餅
大阪朝日新聞社のホテル晩餐会
京都一力亭
ザボンの皮の砂糖漬(貰い物)
開化丼
鰻飯 (自宅)
神田川の鰻
紅屋の唐饅頭
彼岸のお萩
星が岡茶寮(寺田寅彦送別会)
秋田蕗の砂糖漬(貰い物)
越後の笹飴(貰い物)
浜町の常磐(講談の帰り)
西洋軒のすき焼
鶉料理
鶏のすき焼
ロシアの揚げパン
(中に米の入りたるものと、肉の入りたるものと、
カベツの入りたるものとの三種あり)
ジャム
サーヂン
松本楼(虚子が来てとりよせた西洋料理)
上野精養軒(会合)
藤村の菓子(ヨウカン。小宮豊際が持参)
銀座仏蘭西料理
海老フライ
小川町風月堂で紅茶と生菓子(痔手術の帰り)
あんころ(京都三年坂阿古屋茶屋)
京都の旅さきで買った缶詰、鶏、ハム、チョコレート、ユバと豆腐
京都河村の菓子(貰い物) *
こんなふうに箇条書きにして見るのも楽しいが
漱石の初期のあのごった煮文体は
食べ物をこんなふうにいちいち日記に記す体力から
きっと来ているのだろうと
気づかされる
イギリスで食い覚えたビスケットは
ことのほか
好きだったようで
書簡には
「
「ビスケットは事件顔る進行して最早一個もない」
「
などと
めったやたらに食べている
学生から集めた試験の
山のような答案を
ビスケットを齧りながら採点するなぞ
多くの先生たちの共有する経験で
「ビスケットはずんずん方付く」のに
「答案の方は一向進まない」のも
わかるわかる
というところだろう
*『文人悪食』(嵐山光三郎、新潮文庫、1997), pp.15-16.
0 件のコメント:
コメントを投稿