正方形の海である
74㎝×74㎝だという
制作者のジェジュ・ナガールジュナさんによれば
はじめは1m×1mの大きさで作ろうとし
実際に試作をした
しかし
大きすぎる
という
印象を抱いた
79㎝×79㎝も
彼にとっては魅力的に感じたが
かなり長い逡巡の末
74㎝×74㎝に
落ち着いたのだという
枯山水のような
ただの箱庭ならぬ
箱海と違い
現実の海と繋がっていて
実際の海水がつねに流入したり
流れ出ていったりして
74㎝×74㎝の生態系となっていることには
驚かされる
小さいがつねに波立っており
水を掬って顕微鏡で見れば
さまざまなプランクトンが泳いでいる
時には小魚が入って来て泳いでいることもあるが
大海と繋がっているので
いつのまにかいなくなっていたりする
74㎝×74㎝の防水槽に水を入れて
正方形の海だ
と呼んでみるのは容易だが
実際に大海と繋がっていて海そのものとするには
想像を絶した技術が要求される
そこのところは
いわゆる企業秘密のようなものだとして
ジェジュ・ナガールジュナさんは
明かしてくれない
固定されておらず
どこにでも移動できる正方形の海なのだから
目のあたりにすると
リアルな魔術を見せられている気になる
「おもしろいのはね
小さくとも
本当の海ですから
時どき
雲も湧くのです
74㎝×74㎝の上に湧くので
小さな雲なのですが
そこから
雨が降ることもあります
74㎝×74㎝の正方形の海から移動し
絨毯や床の上に雲が流れて
それらの上に雨を降らすこともあるのです
さいわい
小さな雲なので
大きく濡らすことはないのですが」
74㎝×74㎝の海に
小さな雲は
どんな雨音を立てて降らすのだろう
聞いてみたい
と思うが
同時に
もっと小さな海もこしらえてもらい
私の部屋に置いてみたく思う
27㎝×27㎝の海とか
もっと小さな
7㎝×7㎝の海とか
7㎝×7㎝の海に降る雨は
髪の毛よりも細い
無音の
というより
むしろ周囲の音を吸うような
雨音を立てるだろうか
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