若ければ
本というものの
この世でのあまりの多さには
辟易するというより
窒息させられてしまうような
絶望的なまでの重圧も
感じさせられることだろう
歳をかさねていくうち
本や
それらの評判や
書き手や出版社の浮沈を
いやというほど目にし
とある一冊の本が
じぶんの手もとに流れ着いてくることにも
どうやら
大いなる偶然と奇跡があるのだと
気づくようになる
そんな経験を重ねるうち
ある頃から
わたくしは思うようになった
出会う本のすべては
ただわたくしひとりだけに届くようにと
書き手たちが
格別の配慮と熱情をこめて
ごく個人的に
水入らずの書き方で
したためて
たいそうひそやかに
時間と偶然の大河に流し出してくれたのだと
さらに拡大して言えば
出会う本ばかりか
出会う言葉や
出会う表象や
出会う音や
出会う色や
出会うかたちや
出会う情報や
出会うノイズの数々さえもが
セトに殺されて切り刻まれてナイル川に投げ込まれた
オシリスの肉体の断片で
わたくしはそれらをひとつひとつ拾いあつめ
結びあわせて
オシリスを復活させつつあるのだと
すなわち
オシリスの妹であるイシスと
子であるアヌビスの
わたくし
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