2026年2月2日月曜日

夜も更けるまで

 

 

 

嘆くのはよいこと

海はうつくしくなるし

おんなの肌はすこし荒れる

 

秋の雁がねをはじめて見てから

さびしさも嘆きも

生あるものの宝と知った

日が暮れたら

光量のとぼしい灯を提げて

灌木の茂みを抜けて

おんなのところへ行こう

昔のひとびとの歌を口に乗せて

いまも昔も永遠にさびしいと

おんなに語ってやろう

 

すこし荒れた肌を

すこし荒れたようだねと

擦ってやって

肌のさびしさを

よいのだと

それでよいのだと

夜も更けるまで

慰めてやろう

 






 

[初出] NOUVEAU FRISSON (ヌーヴォー・フリッソン) numéro 44 (19963)
編集発行人 駿河昌樹
発行場所 東京都世田谷区代田115、ホース115205 155






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