嘆くのはよいこと
海はうつくしくなるし
おんなの肌はすこし荒れる
秋の雁がねをはじめて見てから
さびしさも嘆きも
生あるものの宝と知った
日が暮れたら
光量のとぼしい灯を提げて
灌木の茂みを抜けて
おんなのところへ行こう
昔のひとびとの歌を口に乗せて
いまも昔も永遠にさびしいと
おんなに語ってやろう
すこし荒れた肌を
すこし荒れたようだねと
擦ってやって
肌のさびしさを
よいのだと
それでよいのだと
夜も更けるまで
慰めてやろう
[初出] NOUVEAU FRISSON (ヌーヴォー・フリッソン) numéro 44 (1996年3月)
編集発行人 駿河昌樹
発行場所 東京都世田谷区代田1-1-5、ホース115ー205 〒155
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