ヘルメス文書と略称される文書のうちのCHⅠで
「存在するものについての省察が始まり
思考の力が甚だしく高ま」った「私」に
ヘルメス・トリスメギストスなるポイマンドレースは
このように教える *
「
こう言うと、彼は姿を変じた。と、
ここに現われる「〈蛇〉のよう」なものに
昔から私は注目し
おそらく旧約聖書でイヴを誘惑する蛇も
光と闇とからなる宇宙創造の一面を物語ろうとする
思い描きやすい粗雑な比喩であろうと考えてきている
旧約聖書も新約聖書も
物語的に
あるいはお話的に読んだのでは
真意を完全に誤読する
個々人の精神的変容の過程を物語化して導こうとする
ひとつの試みと読むべきと考える
ヘルメス文書のこの箇所は
〈蛇〉が闇の見え方のひとつであることを示し
また闇は「湿潤なフュシスのようなものに変化」
闇の可塑性を思い出しておくことは
神秘学徒には興味深いことだろう
文書CHⅠに触れたついでに
「運命」とはないか
について語る別の箇所も見直しておく
さて、神なるヌースは男女であり、命にして光であるが、
一般的な世俗の生活者は
このように「運命」を説明されても
もちろんなにも実感的にわからないだろう
だからこそ
懇切丁寧に実感的にわからせるために
誕生から死までの一連の個人的物語が展開される現世が準備され
その行程を辿らされる仕儀になる
問題とすべきことのひとつは
「わかる」とはなにか
どうすれば「わかる」が発生するのか
ということである
*ここでは『ヘルメス文書』(荒井献+柴田有訳、朝日出版社、1
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