2026年2月3日火曜日

瞬間から瞬間へ足音も立てないように滑っていく


  

 

はやく目覚めてしまい

眠れなくなったので

東京湾方面の日の出前の空の

オレンジ色のグラデーションが豪勢に美しいさまを見ながら

いつもよりはやい朝食をとった

 

海の上を

雲がすこし厚く覆っているようで

地平線間際からの日の出は見えないが

濃い紫色の雲の上のどこかから

今日の太陽はもうすぐ顔を出すだろう

 

今日一日のヤマ場を

もう生きてしまったといってもよい

美しい静かな光景である

 

舞台というか

クライマックスというか

じぶんの生活のいちばんのヤマ場

いちばん盛り上がらせるべき場面について

設定を誤ってしまう

ということは

たびたびあった

 

数週間という期間や

数ヶ月という期間のなかでも

よくそれは起こるし

たった一日という時間経過のなかでも

うっかりすると

誤ったヤマ場設定は

やってしまいがちになる

 

子どもの頃から

ずいぶんそのように教えられ

慣らされてきたので

たった一日のなかでさえも

さほど重要でないどうでもいい時間や

次に来るものへの準備だけしていればいい時間や

注意力と集中力と機敏を発揮して

十全に生きるべき時間などとの差異をつけるように

いつのまにか成って

現代人は大人というものになっていく

 

そうして

毎日がやってくるなかで

だれか人に会うことや

なにかしらのイベントのみを大ごとに見なして

それらに向かっていく時間の流れを

あまり重要でないことであるかのように見下してしまうのが

ふつうの社会生活者の流儀のように

なっていってしまう

 

本を読むのが好きな人や

スマホやタブレットで映画を見るのが好きな人なら

だれでもすぐにわかってくれるだろうが

人に会っての会食や宴や

なにかしらのイベントへの参加や列席などは

読んでいる本の数十ページや

見ている映画の数十分よりも

往々にしてつまらないことがあまりに多い

 

嗜好や好奇心や欲望の合わさったじぶんという意識体が

正直におもしろさや満足度から判定すれば

その日の本当のヤマ場やクライマックスや真の舞台は

会って数時間を費やした人との会食や宴ではなく

だいぶ前から予定されていてそれなりに準備もしたイベントでもな

じぶんの手のひらで好きなように調整できる

本やスマホやタブレットという

軽い静かなものを通してひそやかに経験できるもののほうにこそ

あったのだということになる

 

森や林を歩くのがなにより好きな人なら

だれも伴わずにひとりでゆくりなく緑のなかを歩くのこそ

その日のクライマックスであろうし

ただ太陽のひかりに当たっているのが幸せだと思う人なら

町の公園であれ川岸であれビルの廊下の端の窓べりであれ

どこにいても人生のクライマックスを感じるだろう

 

こうしたことに気づいた人は

さらに進めば

あらゆる瞬間瞬間が人生のヤマ場であり頂点であり

舞台でありクライマックスであることに思い到る

人に会っての会食や宴やなにかのイベントなど

起き抜けに冷たい水をすこし飲む瞬間と

なんら価値的にかわるものではないことに気づく

 

このように気づいた人は

どの瞬間をも特権化しないので

瞬間から瞬間への精神の移動がスムーズになる

このスムーズさは

エネルギーの無益な漏出を減らす

どんな社会も

個々人にエネルギーの漏出を発生させることによって

じぶんという機械の糧にしようとするが

瞬間から瞬間へ

足音も立てないように滑っていくごとき生き方を身につけた人は

社会にエネルギーを吸われる度合いが

グッと減っていくことになる

 

雲の帯からついに太陽が顔を出し

今日の日の出となったが

強い陽光ながら

やわらかく心地よいのが

朝の日の出のひかりの特徴だろう

 

わたしはこの頃

太陽にじかに

正面から感謝礼拝をするようになった

思う言葉も簡単で

やりたい人はだれでもできよう

 

太陽よ

生かしてくださってありがとうございます

二度くり返すのだ

 

大宇宙よ

生かしてくださってありがとうございます

とも

二度くり返す

 

ついでといってはなんだが

存在よ時間よ

生かしてくださってありがとうございます

とも二度くり返す

 

だれでも知っている

だれでも言える

この

あっけないほどありきたりの言葉が

いわば

わたしのついにたどり着いたマントラであり

エネルギーと

意識と

生の感覚と

そして

存在と時間とを

常時与えられていることへの

感謝である

 

わたしは存在であり

時間であり

太陽から来たものだけでできており

大宇宙としてある

 

それ以外のことはすべて

代替可能な

その都度その都度の

気まぐれな素材の吹き寄せに過ぎない








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