2025年11月18日火曜日

腐爛

 

 

 

腐爛

という

滋味深い言葉を

たっぷり

使ってこなかったな

気づく

 

あまりになめらかに

意想外に

言葉の

つらなっていく

吉岡実の

「静物」をひさしぶりに読み返して

 

そのまわりを

めぐる豊かな腐爛の時間

いま死者の歯のまえで

 

のあたりに

立ち止まって

 

そうして

二度三度

読み直して

気づく

 

ここでは

じつは

時間が静物になっていて

同一平面に

あらゆる瞬間が

配されているのだ

 

彼が

なにげなしに

散らし置く

 

大いなる音楽へと沿うてゆく

 

の「沿うてゆく」

とか

 

この夜の仮象の裡で

 

において

「この夜という仮象のうちで」

としないで置く

こと

などは

 

まだ

わたしには

できない

書けない

思う

 

1955年の詩集「静物」刊行から

70年も

経って

 

まだ

 




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