腐爛
という
滋味深い言葉を
たっぷり
使ってこなかったな
と
気づく
あまりになめらかに
意想外に
言葉の
つらなっていく
吉岡実の
「静物」をひさしぶりに読み返して
そのまわりを
めぐる豊かな腐爛の時間
いま死者の歯のまえで
のあたりに
立ち止まって
そうして
二度三度
読み直して
気づく
ここでは
じつは
時間が静物になっていて
同一平面に
あらゆる瞬間が
配されているのだ
と
彼が
なにげなしに
散らし置く
大いなる音楽へと沿うてゆく
の「沿うてゆく」
とか
この夜の仮象の裡で
において
「この夜という仮象のうちで」
としないで置く
こと
などは
まだ
わたしには
できない
書けない
と
思う
1955年の詩集「静物」刊行から
70年も
経って
まだ
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