2025年11月26日水曜日

人類の思念の垢


 

 

JE est un autre.

Arthur Rimbaud

 

 

 

 

地球に来てみて

文字で

なにか記してみると

じぶんの言葉だ

などと

思い込んでしまう人も

出てくる

 

言葉も

文字も

人類の思念の垢で

いま記す人のものでなどなく

記す人の思いも

無数の外的刺激の混淆や乱反射でしかないのに

じぶんの言葉だ

などと

錯誤するのを

喜んでいる

 

記す人の指でさえ

生物や人類の遺伝子のサンゴ

 

十代のランボーの知見に

せめては

到達しておこうよ

 

「私」とは他者だ(“JE est un autre.”)

 

あるいは

私は他者だ(“Je suis l'autre”)

という

ネルヴァルの知見に

 

さらには

フロイトの知見

「自我は自分の家の主人ではない」

dass das Ich kein Herr sei in seinem eigenen Haus

 

もちろん

ポール・ヴァレリーの知見も

 

「他者と意志の伝達をはかれる限りにおいてしか

人は自分自身とも通じあうことができない。

それは他者と意志の伝達をはかるときと同じ手段によってしか

自分とも通じあえないということである。

彼は、私がとりあえず「他者」と呼ぶものを仲立ちとしてーー自分自身に語りかけることを覚えたのだ。

自分と自分との間を取り持つもの、それは「他者」である。」
                 (『カイエ』237909

 







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