ナポレオンについての伝記を
夏のはじめから読み出したものの
なかなか
思いどおりに進んでくれない
ぜんぶで2000ページを超える本でもあるし
わかりやすくよく書けているものの
もちろんフランス語なので
書き手の癖にひっかかる時もあれば
いろいろ辞書を引かないとわからない表現もあって
辞書をいくつも脇に置いて
あれこれ見ているうち
うとうとしてしまうことも多い
同じフランス革命期を扱ったものとして
ついでに再読を始めたアナトール・フランスの
『神々は渇く』などを見ると
さすがに名作家だけあり
熟達のフランス語が非常にわかりやすい
どんな本もこのように書いてくれればと思う
アナトール・フランスや
フローベールなどの名文では
名詞を飾る形容詞が二つか三つに限定されており
一瞬に感覚的に納得のいく
味のある煌めきを与えてくれる副詞を
適切に入れてくるもので
読者側には
理解とリズムと味わいが
同時に与えられる
ある時期から
こういう文章は古くなったとされてしまったが
読書の効率と味わいを確保するには
書き手も読み手も
まずは
アナトール・フランスやフローベールあたりを熟読するところから
始め直す必要があると
いつも思う
いつも同時に並行して読んでいる本は
少なくても30冊を超えている
若い頃からそういう性質で
このためにひどく苦しんできた
集中して一冊だけ読むことができない
もっとも苦しむのは
ちょっと長い旅に出る時である
本選びも困るが
10冊以上は持って行くので
嵩の点でも重量の点でも難儀する
しかも
文庫本や新書ではなく
ハードカバーで持って行く場合も多く
下手をするとリュックの半分は本で埋まってしまう
どうせ10冊分の文字をぜんぶ読み終えられるわけもないのだから
思い切って2冊ほどにすればいいのに
どうしてもそれができない
しかも旅先の書店などで
さらに買い足して移動するので
途中からの行程は苦役のようになっていく
まあ、いい
昔の愚かな旅のしかたなど
もう
思い出す価値もない
それに
本だって
どうでもいい
どんなにのめり込んで読んだって
数年もすれば
漠然とした輪郭のほかは
20%も
覚えてなどいない
「おめえは本を読むくちなんだな?」
と
フォークナーの『サンクチュアリ』のなかで
ポパイは言う
それだけで
終わらせるポパイ
いつのまにか
16歳の時にイギリスのギルフォードで出会った
同い年のフランス娘が
この人生でもっとも長い友となった
彼女に
いまナポレオンの伝記を読んでいる
これまで
シャトーブリアンやコンスタンやスタール夫人側からの
ナポレオン批判ばかりを読んできたが
ナポレポン自身の少年時代から接することにしてみると
フランスに占領されたコルシカ人としての
フランスへの違和感や復讐心とともに
まったく別のナポレオン像が見えてきて
非常におもしろいし
フランス革命史がまったく別物に見え始める
と書いた
すると彼女から
遠い血縁に
ナポレオン側について戦った軍人がいる
ジャン=バティスト・エブレという
と情報がきた
なんと
ジャン=バティスト・エブレ(Jean Baptiste Eblé)将軍!
ロレーヌ生れの優秀な砲兵で
アウステルリッツの戦いで手腕を示した
スペイン侵攻では
マッセナ元帥の指揮下で砲兵隊を率いた
ナポレオンのロシア侵攻の際には
舟橋工兵隊の指揮官を務め
必要な様々な工具をみずから発明したり
工兵部隊の機動性と自給自足能力を向上させる
馬車搭載型移動式金属炉も発明した
ナポレオンのロシア敗退にあたっては
極寒のベレジナ川にみずから身を投じて
橋を架橋し
残存兵力を奇跡的に脱出させるのに功を奏したが
この際に大きく体を損い
54歳でケーニヒスベルクで死去した
ジャン=バティスト・エブレ将軍の冥福を祈る
とともに
ナポレオンの時代をよりよく知るための
新たな霊的な導きをお願いしたい
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