まぢかにも
遠くにも
満開になった桜
デッキチェアなんか持ち出し
ひさしぶりの陽射しのなか
桜に包まれながら
きみは本を読んでいる
花に釣られ
春に釣られ
ぼくたちのように
暖かさへとさまよい出た
花見のひとたち
ちょっとふらふらしながら
あの枝へ
この枝へ
回遊をやめない
こんな明るいひかりのなかでは
去っていったものごとも
すべて
あざやかに見える
思い出すまでもない
ひとつひとつ
どれも位置を得て
あり続けている
ふしぎよ
なんと明るい桜日…
すっかりくつろいで
そよ風も
陽も
花びらも
肌にうけとめて
本など
こんなふうに
開いていたこともあったと
いつかきみは思う
時はきっと伝えていく
おなじ心ばえの
未来の
あたらしい人たちへ
きみの
こんなすがたを
この一瞬のことを
陽も
花びらも
肌も
みずみずしく輝いていたと
(ぽ389号・2010年4月)
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