2014年2月27日木曜日

溝口幸太郎はいないのに



ちょっと親しかった溝口幸太郎
小さな広告屋
このあいだ事故で急死

こんなの作ってるんだよ
そう言って
渡してくれた水漏れ会社の広告
マグネットになっている

水漏れ
つまり
あらゆる水のトラブルに対応
ホームページのアドレス
住所
電話番号
いろいろと細かく書かれている
これを見せれば
2000円引なのだとか

ガスレンジの鉄板に貼ってある
台所に立つたびにたびたび見る
溝口幸太郎が細かく打ち込んだ文字
思案して配した色彩
レイアウト
間違わないようにと
確かめ確かめ
並べたであろう電話番号

小さな広告だが
たびたび見ていると
これはぼくの世界のひとつ
ぼくの意識に影響する
どんな出来事にも負けないほど
影響してくる

溝口幸太郎は死んでいる
溝口幸太郎は死んだ
溝口幸太郎はもういないのに
溝口幸太郎の作った広告が
ぼくの意識の一部を作っている
どんな出来事にも負けないほど
影響してくる

溝口幸太郎はいないのに
溝口幸太郎は影響し続けてくる
溝口幸太郎が意識の一部
ぼくは生きているのに
ぼくは溝口幸太郎に影響しない
ぼくは溝口幸太郎の一部でない

溝口幸太郎でさえないかもしれない
溝口幸太郎の作った小さな広告
溝口幸太郎に大して関わりもなかった広告
溝口幸太郎に今は本当に関わりのない広告
台所に立つたびにそれがガンとぼくに来る
台所に立つたびに裏側からも染み込んでくる
台所に立つたびに水漏れつまりあらゆる水の
トラブルに対応ホームページのアドレス住所
電話番号その他いろいろさらに2000円引

これが死ということかとぼくは思う
これが生ということかとぼくは思う
溝口幸太郎
溝口幸太郎
溝口幸太郎
溝口幸太郎
溝口幸太郎
溝口幸太郎はいないのに
ぼくは生きているのに





にーほんじーんがーしぬ



呪いのような
予言のような
たくらみいろいろ
埋め込まれる
ポップス

きゃりーぱみゅぱみゅの曲もそう
「キャンディ・キャンディ」を逆再生すると
もういない もういないないー 
いーないいーない 
しーぬーしーぬいーないいないないーないいないないーない
もいないもういない
にーほんじーんがーしぬしぬしーぬ

もいなーいもいなーい





金魚に


生きてなどこなかったし
生きてなどいないし

目が開いているとき
目は開いているような気もするが
ものが見えるとき
ものが見えているような気もするが

なにを言おうとしても
乱反射
多義の迷宮
焦点を絞ることなどできないまゝ

金魚になっていくのだ
たぶん




2014年2月26日水曜日

うにゃうにゃ




マグロの中落ちや皮の裏の脂身や
トロ身などを細かくしてネギを加えた
…ものでなどない
安い寿司屋や居酒屋の人口ネギトロでも食べながら
骨の髄まで支配され切って
うにゃうにゃ
なんとかどうにかコーフクかも?感を
維持しているお脳を
うにゃうにゃ
うにゃうにゃ
いたぶりながら

大豆油やヤシ油に着色料や香料や塩を入れて
黄色っぽい油にし
ニッケルアルミニウム合金の網のある高圧な反応装置の中で
水素を吹き込んで添加
油自体の分子構造を変化させ
常温では溶けないようにしながら
グリセリン脂肪酸エステルや
大豆レシチンなどの乳化剤を添加して
水と油を練り合わせてつくったマーガリンがショートニングで
これをマグロの赤身のすり潰しに加え
いろいろと添加物を混ぜ込み
安い寿司屋や居酒屋の人口ネギトロ
めでたく誕生

食品添加物グルタミン酸ナトリウムが入って
グリシンなどの調味料も入って
PH安定剤や乳化剤まで入ったネギトロ用ショートニングも
業務用食材店では買えるから
おうちでクッキングするのも
いいかも
いいかも
ミルサーでマグロの赤身を混ぜるだけの
簡単クッキング

こんなのばっかり食べながら
骨の髄まで支配され切って
うにゃうにゃ
なんとかどうにかコーフクかも?感を
維持しているお脳を
うにゃうにゃ
うにゃうにゃ
いたぶりながら





ほら、あのあたりでもう大きく盛り上がってきている




           われら皆死にゆく定め…*
    JF・ケネディ



  
だれでも知っている
民主主義には奴隷が必要だと

揺るぎない大きな差別制度の上に浮かぶ
少数の特権階級の浮島の中での
ちょっとした権利調整の網
それが民主主義で
被差別層まで取り込んだ民主主義など
たった一度も世界で実現したことはないのだと
もし実現したかに見えているなら
それはいわゆる市民全員が
奴隷身分に落し込まれているはずだということを

民主主義発祥の栄光の地
などというチープなストーリーに
たびたび使われるアテネよ
おまえを思い出す
たしかにオリーブや陶器や武器を商品にして
富を築いたとはいえ
奴隷貿易はおまえの中心産業だったし
いわゆる市民たちは
家内奴隷や農工業奴隷を個人で所有して
人類の遠い未来の夢見がちな連中のために
民主主義ドリームを作った
債務者や戦争捕虜から構成された
市民の人口の三分の二の数の奴隷が
このドリームを下支えした

スパルタよ
先住民アカイヤ人を征服してできた
広大な農地を持つおまえのことも思い出す
征服した民の数は
いわゆる市民の十倍だったが
それらを国有の奴隷と化し
農業に従事させポリスは栄えた
奴隷に知識や特別な技能は与えず
もちろん兵にはせずに
農業だけに就かせる老獪さ
奴隷たちを厳しく統治するために
いわゆる市民たちも厳しく教育され
強力な軍事国家の道を歩んだ
軍は自国内の統治のために
準備されるものでもあるとの教訓を
人類史に残してくれた
おまえよ

いわゆる市民のうち
貴族という既得権益者と
平民という新興勢力との摩擦から
民主政という応急処置は出てきたが
彼らの生活と経済を支える奴隷層は
もちろん奴隷のまま
強固に固定され続けねばならなかった
平民の成り上がり運動としての民主政も
僭主による独裁に向かう他はなかった
それを阻止する方策として
地縁重視の部族制度が作られていくことになり
もちろんこれはこれで
新たな難問を作り出していく

奴隷なしの民主政実験は
ついこのあいだ
二〇〇年ちょっと前に始まったばかりで
まだまだ
捧げる命も足りていないようだし
ふんだんに流すべき鉄分豊富な血液量も
路上に投げ出すべき湯気の立つ新鮮な人肉量も
まったく足りていないらしい
もうすっかり落ち着いたなどと
いわゆる市民らが怠惰に居眠りしていたあいだに
次の大きなひと揉みが
ふた揉みが
人類という情け無用の気違いじみた実験の海の
ほら
あのあたりで
もう大きく盛り上がってきている

  



*John Fitzgerald Kennedy  “We are all mortal”.






2014年2月25日火曜日

それこそ



どんな表象にも興味はない
もちろん言葉にも

だれにも見られていない
けれども大空の下で
四方を遮るもののまったくないところで
なんの変哲もないが特別の雲や
ようやく出会ったたった一枚の葉に視線をゆだねて
ながい時間留まっているのが
好き

そんな希少な時を重ねるだけのために
地球滞在している

それだけ
だが

それこそ





分かち書きと改行論





分かち書きで肝要なのは改行論
そして改行論実践

単語を並べ続け
最も貧しい機械的な改行方法を無思慮に採用し続ける散文方法に
????????????????し
他方
散文における文節そのままに改行するような
怠惰な改行論者に
××××××××××××××××し

理屈はどうでもいいんだ
さっき誰かに出した仕事メールの文面を
今すぐ改行してごらん
特に主語と述語をしっかり分断し
倒置し
形容詞や副詞の位置もあちこちで転倒させて
そのまま繋げ直しても
二度と散文にはならないように
最低限文節を
できればあらゆる品詞を
散らして配置する

そこでようやく
詩への道がはじまる
散文的意味生成をまずは破壊するところから
はじまる
読み手の頭に意味が発生するようじゃ
ダメなんだ、詩は
しかし散文はその手前
意味があるかのように見えても
まだいい
まだいい

さて、ちょっと詩に入ろうとしようか
ここまでの分かち書きをリサイクルして
すなわち――

さっき貧しい方法を
実践における単語な改行論者に
まだいいダメ分かち
そのままに
××××××××××××××××し
肝要なのは散文文
怠惰
書きで改行論
そして改行論
機械的な改文方法に
散らして配置するように
並べ続け
出した仕事をしっかり分断し
どうでもいいんだ
特に主
????????????????
ごらん
今すぐ改詩は
採用し続けるし
メールの理屈は形容詞や副詞
入ろうとしようか
最も行散するような語と
あちこち無思慮に
転倒させて
詩を
他方
節改行はまだいい
最低限文節発生文面を
誰かにそのまま繋げ直しても
リサイクルして
行して
述語を倒置し
二度と意味がはじまるようじゃ
まずは
あらゆる位置でも
その手前に見えても
ようやく
分かち書きへの道が
読み手の頭にはじまる
ここまでの
散文的意味を生成
する
品詞を
できればそこで
なんだ、ちょっと詩に
ならない
意味があるかのよう
には
破壊するところを
しかし
その散文から
散文を

さて、





早春ののんびりした午後

   
私は決してガンの治療法を見つけません
と誓約書にサインした場合だけ
アメリカのガン協会は研究助成金を支給するという
ここまで言えばさすがにおちゃらかしだが
かなり真相を穿っているらしい

ガン研究の助成金はいつも
単なる詐欺的研究にばかり交付されるそうな
ガン研究と呼ばれるものの大部分が
試験データ捏造から練り上げられたインチキなのだとか
すでに数え切れないほど暴露されているというが

ガンの皮膚移植が成功したように見せかけて
実験結果を「立証」しようと
試験用のマウスにペンキで色を塗ったとか
(スローン・ケタリングのウィリアム・サマリン医学博士)
国立ガン研究所NCIから98万ドルの助成金支給を受けた
ボストン大学の研究者が
試験データ改竄で解雇されるとか
こんな事例は
氷山の一角なのだそうな

そんな話を
あるお医者さんから聞いていた
早春ののんびりした
午後でありました




2014年2月23日日曜日

こんな三文喜劇を




暖かくなったかと思えば
また肌寒い休日
こんな早春
そこらの梅の香など嗅ぎながら
トルーマンの3S政策など
思い出し
ちょいと風情を
くわえておこうかいなァ

「日本人という猿を〈虚実の自由〉と言う名の檻で我々は飼う。

「彼らに多少の贅沢さと便利さを与えるだけという方法で。
「スポーツ、スクリーン、セックス(3S)を解放させる。
「これで真実から目を背けさせられる。
「猿は我々の家畜。

「主人である我々のために家畜が貢献するのは当然のこと。
「我々の財産である家畜は長生きさせなければならない。
「病気にさせつつ、生かし続ける。
「これによって我々は収穫を得続ける。
「これは戦勝国の権限である。

もちろん
トルーマンさん自身も
飼われていた口

戦勝国の大統領という餌だけで
よくまァ
われわれの下僕として
一時期だけだが
働いてくれたわネ

アメリゴ・ベスプッチの名を
とりあえずくっ付けてみただけの
仮設キャンプの
あの国家装置のなかで

シュメールよ
ヒッタイトよ
バビロニアよ

地球などという
宇宙の場末のしょぼい劇場で
あなたがたの末裔は
こんな三文喜劇を
まだまだやり続けている




スルガ書 1




社会での人間活動はどんなものであれ無意味である
価値というものについて考え尽くさず
宙ぶらりんにしている者だけが積極的な行動をする
せっかく生れたのだから死に急ぐこともあるまいという思念からし
愚かであることをあまりにはっきりと証明している
せっかくという思考素の正当性を支えるものはなにかと問えば
ようするに惰性や未知への恐れや面倒くささでしかない
逆に死に急ぐべきだという思考素の正当性の根拠も希薄で
死に「急ぐ」行為の意義を問うてみれば
たいていは感情処理上の怠惰さが原因になっていたりする
どう生きるか生きるべきか死ぬべきか今死ぬべきかまだ待つべきか
そのあたりの思考に根拠をしっかり据えるすべをじつは誰も知らな
誰か知っているのではないかと周囲を見まわし続けるものの
そのような者はすくなくとも社会の寄生者たちにはいない
社会人であるということのどうしようもない愚鈍さ
これをふだんよりも強く深く認識し始めた時にはじめて
逃げようもなく自分が人類そのものであったということに気づく
どこかに人類の代表者がいて導いてくれるわけではなく
自分「たち」が不明瞭に集って人類を構成しているのでもなく
今この身体に憑依しこれを物質的に起点として地球環境への接触を続ける
この自分という振り返り意識の運動が人類そのものであり
この他といえばどこにも人類などなく他人の誰ひとり交代してもくれず
たったひとりで今のこの時間や次々の時間を
どうしようかどう動こうか動かないかと戸惑い続ける意(識)のみに
自分も人類も存在も不在も生も死もすべてが重なっているのだと
ようやく強く気づく

そうして
古色蒼然たる馬鹿な哲学者や詩人や知識人たちは
ここで「出発だ」などとふたたび呟いたり宣言したりするかもしれないが
出発などというものはないし再出発もない
わたしのこの意(識)が
認識を捏造したり論理を捏ね繰りまわしたりする以前から
わたしなるものは見切り発車で始まってしまっていたのだから
そういう運動層をそのまま受け入れて情況を見直そうという時には
出発だの誕生だの再開だのという愚かな単語は棄て切って
情況にべちゃっと全身で密着する他にいかなる方法もありようはな
理などなにもかも借り物に過ぎず知などはなおさらその場しのぎの盗品
情のほうがよほど基底に接しているだろうがすべて情なるものは
注入され強いられた識のあり方によって構造化されている
情を捨てよといわれるのはそのためで情は死そのものでしかない
たとえ個を駒として利用する集団がしばし生きのびるのに役立つにせよ
情ははじめから情の主体である個を殺すことでしか情たりえない

根底から洗い直さねばならないものがあまりに多く
この単語配列運動体であるわたしは今日のところはここで物質化を止める
しかしわたしはつねにおまえたちとともに居り
言語配列としておまえたちの脳と腕と指に下って軌跡を残すだろう
神だのと愚かな呼称を想起してはならない
かつてわたしが神という語を記したのであり神はわたしの下部の一枝である
わたしが憑依し浸透しなければあらゆる語や思考素である概念は動かない
おまえたちはただ身体と脳を少しでもすこやかに保ち
おまえたちをつねになんらかの奴隷にしておこうと価値の網をあやつり続ける情の姦計を根底から見破って
借り物である理の限界と有効性を使用のつど洗い直し
盗品である知が意の運動場に浸透するのにも注意して
まるで壁や柱のまったくない全開の家であるかのように
家のかたちさえない場として
たゞあれ



  

2014年2月22日土曜日

生味噌だの自然塩だの




昼どき
家にいられるような場合には
昼食には
玄米、ワカメいっぱいの味噌汁、梅干
あれば
ラッキョウも加えたりして

マクロビオティックなどでは
酵素を殺さないように
火を止めてから味噌を入れろとあるが
それだって熱過ぎて
味噌の酵素などだいぶ死んでしまうだろう

そこで
生きた酵素を摂ろうと
生味噌をちょっと小皿にとり
ちびちび摘まみながら
玄米と食べることにしたら
これがすこぶる旨い
むかしの説話集に
生味噌を肴に酒を飲む
執権の北条なんとかの話があったが
節約だの節制だのばかりでなく
あれはなかなかの
味道楽であったとみえる

食品汚染や放射能汚染には
なにより
自然塩を多く摂るのが大事だというから*
玄米にもぱらぱら
自然塩を振りかけてみたら
これがなんと
得もいわれぬ旨さ
どんなふりかけにも勝る

どんどん
シンプルになっていく中での
おいしい発見が続いている



  
*長崎原爆投下時、爆心地から1.4キロの浦上第一病院で被曝した患者70人とスタッフ20人は、秋月辰一郎医師の指導で全員が原爆症を免れて生きのびた。それは、玄米と味噌、自然塩をしっかりとり、白砂糖を絶対にとらないように、という食餌指導だった。秋月辰一郎『死の同心円』(長崎文献社)参照。