2018年6月1日金曜日

おなじみの物語

 
Ici ou là  tout est pareil.
Pierre Reverdy


なにかを語りはじめると
たいていのひとは語るのではなく
語らされていってしまう
記憶のなかの紋切り型の物語のいろいろな形態に乗せられて
物語たちにいつのまにか憑依されて
され切って

いろいろな自由をひとは求め
いろいろな自由を叫び
いろいろな自由を手にしたつもりにもなるが
いつもいつも無頓着
じぶんのなかに巣食う物語たちから自由になることには

何百年経っても
何千年経っても
解放の物語や
復活の物語
報復の物語
勧善懲悪の物語
失われた何々を取り戻す物語
未知なるものへの物語
じぶん探しの物語
真なるものへ向かう物語
不条理の物語
意味と無意味のはざまを迷う物語などに
喜々として
深く深く
真っ逆さまに
それが価値あることとでもいうように
陥っていくまゝ

いつもかわらぬ
おなじみの物語形態への転落の物語
これもまた
おなじみの物語
いつもいつもの物語



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