[アラン・ドロン+ダリダによるParoles Parolesの翻訳・翻案]
☆原曲はイタリアのカンツオーネParole parole(1972年)で、レーオ・キオッソ+ジャン・カルロ・デル・レ作詞、ジャン・フェッリオ作曲。ミーナとアリベルト・ルーポが歌った。
イタリア語原曲(Mina&Alberto Lupo)
ダリダの訃報と葬儀
(AD=アラン・ドロン、D=ダリダ)
AD : 奇妙だ…
今夜はどうしたんだろう。
はじめて会ったような気分できみが見えるよ。
D : また言葉ばっかり。いつも言葉。
同じ言葉。
AD : きみに、なんて言っていいかわからない…
D : 口先ばっかり。
AD : きみはあの美しい愛の物語のようだよ。
けっして読み終えることのないような…
D : 言いやすい言葉、はかない言葉。
美しすぎるわね。
AD : きのうも明日もかわらぬきみ…
D : まったく、…美しすぎよ。
AD : いつも、僕の唯一の真理であるきみ…
D : 夢ばかり見ている時期は終わったのよ。
思い出だって色あせるわ、
それが忘れられる頃にはね。
AD : きみはヴァイオリンを鳴らす風のよう。
遠くへバラの香りを運んでいく風…
D : キャラメル、ボンボン、チョコレート…
AD : ときどき、きみがわからなくなるんだ。
D : ありがたい言葉だけど、私向きじゃないわ。
他の女性に贈ってあげたらいいんじゃない?
風とバラの香りの好きなひとに。
私の場合、甘いやさしい言葉は、
唇に留まることはあっても、
けっして心に留まることはないの。
AD : もう一言言わせておくれ。
D : また、言葉、言葉、言葉。
AD : 聞いておくれよ。
D : 言葉ばっかり。
AD : お願いだから。
D : 言葉、言葉、言葉。
AD : 頼むから!
D : 言葉、言葉、言葉、言葉、言葉、言葉。
あいかわらず言葉ばかり、風に蒔きちらして。
AD: ほら、僕の運命がきみに語っているのさ…
はじめてのようにきみに語っている。
D :またまた言葉、あいかわらず言葉。
同じ言葉。
AD: きみにどんなに理解してもらいたいことか…
D: 言葉ばっかり。
AD: お願いだから、一回ぐらい話を聞いてくれ。
D: 魔法のような言葉、駆け引きの言葉。
嘘に響くだけの…
AD: きみは、ぼくの禁じられた夢。
D :まったく…、ひどい嘘つき。
AD: 僕の唯一の苦悶にして、たったひとつの希望。
D :語りはじめると何があってもやめないのね、あなた。
黙っててほしいの。わからないのかしら。
AD: きみは僕のたったひとつの音楽。
砂丘の上の星々を踊らせる…
D :キャラメル、ボンボン、チョコレート…
AD : きみが存在していなかったら、僕がきみを創造しただろうさ。
D : どうもありがとう。でも私には向かないわ。
他の女性に贈ったらいかが。
砂丘の上の星を好きな方にでも。
私の場合、甘いやさしい言葉は、
唇に留まることはあっても、
ぜったいに心に留まることはないの。
AD : もう一言言わせておくれ。たった一言…
D : 言葉、言葉、言葉。
AD: 聞いておくれ!
D :言葉、言葉、言葉。
AD: お願いだよ!
D :言葉、言葉、言葉。
AD: 頼むから!
D :言葉、言葉、言葉、言葉、言葉。
また、言葉を風に撒きちらしてるのね。
AD: なんて美しいきみ!
D :言葉、言葉、言葉。
AD:なんてきみはきれいなんだ!
D : 言葉、言葉、言葉、言葉、言葉。
いつも言葉を風に撒きちらしてばかり。
◆1972年のイタリアのカンツォーネParole paroleを、フランス語版にして1973年にヒットさせたドロンとダリダのデュエットだ。この頃、ダリダは最初の夫を自殺で亡くし、自分も傷心から自殺を企て、未遂に終わっていた。近くに住んでいたアラン・ドロンが、そんなダリダを慰め励まそうとして、この曲をレコーディングしたという。
イタリア人でエジプト育ちのダリダは、骨太というか、顎の大きな、非常に目鼻のくっきりした美女だが、心はずいぶん繊細な人だったらしい。失恋を繰り返した末、1987年にとうとう自殺を遂げてしまった。墓はモンマルトル墓地にあるが、モンマルトルの道にはダリダを記念した彫像もある。
◆ダリダのこうした話を思い出すと、少ししんみりしてしまうところもあるが、しかし、この『甘い囁き』は、意味を理解しながら聞くと、ほとんどコメディといっていいユーモラスな歌である。浮わついた美辞麗句をならべ立てて、女の気に入ろうとし続ける男のセリフも面白いが、それを聞かされる女の側の見事な醒め方も面白い。ユーモアに溢れた曲だからこそ、傷心のダリダにアラン・ドロンが持ちかけたのでもあろう。この曲の面白みは、そのまま、ドロンの優しさと友情の表われでもある。
◆とはいえ、この歌の中の男のように、言葉巧みにあっけらかんと賛辞と陶酔を言葉にされると、世界の重心はむしろ、そうした美辞麗句の領域の側にこそあるかのような思いにもとらわれてくる。詩というより、フィクションの発生の契機と必然性に逢着させられているかのようだ。
◆イタリア語の原曲を歌っているミーナは、ダリダ以上に妖艶、非人間的なまでの表情を見せる時があって、忘れがたい魅力を持つ。この歌の歌詞には合わない風貌に思える時もあるが、映画『ヴェニスに死す』でシルヴァーナ・マンガーノが見せた容貌をも思い出させる、顔というものの極限の達成のひとつである。
[原詞]
Paroles Paroles
( Alain Delon + Dalida)
AD : C’est étrange...
Je ne sais pas ce qui m’arrive ce soir
Je te regarde comme pour la première fois
D : Encore des mots, toujours des mots
Les mêmes mots
AD : Je ne sais plus comment te dire...
D : Rien que des mots
AD : Mais tu es cette belle histoire d’amour
Que je ne cesserai jamais de lire
D : Des mots faciles, des mots fragiles
C’était trop beau
AD : Tu es d’hier et de demain....
D : Bien trop beau
AD : De toujours ma seule vérité
D : Mais c’est fini le temps des rêves
Les souvenirs se fanent aussi
Quand on les oublie
AD : Tu es comme le vent qui fait chanter les violons
Et emporte au loin le parfum des roses
D : Caramels, bonbons et chocolats
AD : Par moments, je ne te comprends pas
D : Merci, pas pour moi
Mais tu peux bien les offrir à une autre
Qui aime le vent et le parfum des roses
Moi, les mots tendres enrobés de douceur
Se posent sur ma bouche
Mais jamais sur mon coeur
AD : Une parole encore...
D : Paroles, paroles, paroles
AD : Écoute-moi !
D : Paroles, paroles, paroles
AD : Je t’en prie...
D : Paroles, paroles, paroles
AD : Je te jure !
D : Paroles, paroles, paroles, paroles, paroles
Encore des paroles que tu sèmes au vent
AD: Voilà mon destin te parler...
Te parler comme la première fois
D :Encore des mots, toujours des mots
Les mêmes mots
AD: Comme j’aimrais que tu me comprennes...
D: Rien que des mots
AD: Que tu m’écoutes au moins une fois
D: Des mots magiques, des mots tactiques
Qui sonnent faux
AD: Tu es mon rêve défendu...
D : Oui, tellement faux
AD: Mon seul tourment et mon unique espérance
D : Rien ne t’arrête quand tu commences
Si tu savais comme j’ai envie d’un peu de silence
AD: Tu es pour moi la seule musique
Qui fait danser les étoiles sur les dunes
D : Caramels, bonbons et chocolats
AD : Si tu n’existais pas déjà, je t’inventerais
D : Merci, pas pour moi
Mais tu peux bien les offrir à une autre
Qui aime les étoiles sur les dunes
Moi, les mots tendres enrobés de douceur
Se posent sur ma bouche
Mais jamais sur mon coeur
AD : Encore un mot, juste une parole...
D : Paroles, paroles, paroles
AD: Écoute-moi !
D : Paroles, paroles, paroles
AD: Je t’en prie !
D : Paroles, paroles, paroles
AD: Je te jure !
D : Paroles, paroles, paroles, paroles, paroles
Encore des paroles que tu sèmes au vent
AD: Que tu es belle !
D : Paroles, paroles, paroles
AD:Que tu es belle !
D : Paroles, paroles, paroles,paroles, paroles
Encore des paroles que tu sèmes au vent
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