2014年6月18日水曜日

宙を流れている水 水に




宙を流れている水
水に

わたくしたちは妊娠する
無心を
ずっとしてきたので

宙を流れている水
水に

左から夏草 もう夏草 いちばん遠い星は見えないから
背がこわばって 
透明の栞を挿むちょっとの空き時間

宙を流れている水
水に

お茶を冷ましておく わざと
秋まで
ひぐらしをもう取りに行かない子になるまで

宙を流れている水
水に

えもいわれぬ色の瞳で空を転写している子
手の甲はさざ波立つ老人で

宙を流れている水
水に

からだの一部なのか 全部なのか 時間 着水しそうで
しないで伸びるように進んでいく
鷺 《象徴なんか使わない、使わない…》 皺…

宙を流れている水
水に

…波紋 皺 離水したから… しないで
影を水面に滑らせて 新たな小波も立てずに  
往く 往く 伸びるように 全部なのか 

宙を流れている水
水に

空を転写している皺… いちばん遠い星は
見えないから お茶を冷ましておく 離水したから…
妊娠する 伸びるように 左から夏草

宙を流れている水
水に

右からも もう夏草 透明の栞を 
もう取りに行かない子 着水しそうで しないで
無心 芽吹くもののうちの最後のもの… 

宙を流れている水
水に





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