視覚や聴覚の慰撫にばかりかまけていく世界を
たゞたゞ
おそろしく思う
盲目だった光岡聡さんや
耳の聞こえなかった広谷希代子さんや
目も見えず耳も聞こえなかった田中信次君と分かちあえる未来が
どんどんなくなっていくようで
肉体のさまざまな毀損や崩壊のはてに
すべての感官を失った
たくさんの知りあいや知己たちと
いっしょに楽しみあえる場所が
さらにさらに
なくなっていくようで
わたしは目を閉じ
耳もふさいで
暗い小さな小さな空間のなかに籠もって
それでもくっきり捉えられるものがないかと
からだにも感覚にも一切頼らずに
ながい
ながい時間を
今日も生きようと思う
そう
いちばん大事なのは
ことばもイメージもない
わたしもない
かたちのないはっきりしたあの流れのなかに入り込み
そこでこそ可能になる
自由自在な泳ぎかたそのものとなること
0 件のコメント:
コメントを投稿