2012年6月9日土曜日

初夏、暮れがた


初夏、暮れがた
隅田川から
荒川へ向かい
川べりをゆく

虫の声で草は満ち
大小の沼には
たくさんの蛙が
かしましい

満月の二日後
曇って
月が見えないが
空じゅうが明るい
川べりも明るい
径がぼんやり白い

なにをしているのか
ときどき
人が立っていたり
座っていたりしている
薄やみの中で
考えることもあろう
考えないためも
あろう

たっぷりと
蛙の声が満ちている
また宇宙の音が
脳に生れ直すような
たいへんな声

惜しいかな
ここにいない人びと
薄やみと
川と
蛙ばかりの
初夏
永遠の
暮れがた


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