2012年7月28日土曜日

暑かったたくさんの夜



会いたい人には
ちゃんと会っているさ

暑い夜
熱いウーロン茶を飲んでいる

よみがえる
暑かった
たくさんの夜

南仏のホテルで
〆切の迫った原稿を書き
朝早く
ファクスしたこともあった

樫原神宮前のホテルで
泊まった夏も
ひどく暑かった
橘寺にむかう
稲穂の青波の中の道
夏はいつも
団扇を顔によせて
日かげを作っていたね

黒いシャツばかり
着ていた頃の

あまりに汗が出過ぎて
昼過ぎには
シャツの背も
脇腹も
塩で白くなってしまう
しかたなく
奈良のスーパーで
バーゲンのTシャツを買った
白い綿シャツ
もう20年になるのに
まだ使っている

クーラーを
使わなかったので
毎年
夏の夜は
いつも暑かった
団扇と
扇風機が
にっぽんの夏の
思い出

いま
ぼくの机上にある箱の中の
きみの頭蓋骨の
かけらに
染みているだろうか
それら
思い出は

クーラーを使ったのは
病院を出て
すこし家に帰り
最後の秋の始まりを
ひとりで暮した
50日のあいだだけ
それも
にっぽんの夏の
思い出に
加わっただろうか

暑い夜だ

思い出されることが
いっぱいあって
これから先
なにも
手につかない気がする




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