2012年10月4日木曜日

九月句 (八)



九月二十四日

過たぬ輪郭として紫苑立つ

野分してまあ気分まで大袈裟に

初嵐髪嬲られる愉しさよ

颱風も騒がしき島もなほ遠し

秋の田を想ひ見るべし永田町

勉学に励みし頃の夜食かな

柚子味噌の旨きに惹かれ高台寺

高き皿わざわざ出して衣被

九月二十六日

秋冷を湯上がりの肌にしばし受く

出始めの頃の林檎を描きたし

山葡萄ゆめあこがれのありし頃

素麺で晩餐を締める生姜かな

九月二十七日

岸釣にまた誘はれて手帖繰る

水流を見続けるべし下り簗

秋の夜の自我とは薄きものならむ

捨団扇その傍らの鏡花集

老舗までわざわざ出向き新豆腐

水澄むや音も立てずに逝く歴史



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