2012年10月6日土曜日

たいせつな死者を持ってみると

  

たいせつな死者を持ってみると
一瞬でさえ忘れないとわかった

忘れないから思い出しもしない
忘れないから懐かしみもしない

生きている時以上にいつもいて
自己の観念のようにいつもいる

死体を見たよな、確か、と思う
死んだんだよな、本当に、とも

しかし脳の中にぺったり付いた
この感覚はいったいなんだろう

死なれるということが、これか
すっかりといっしょになること

死なれた人の側の心情はずっと
まちがって表現され続けてきた

ほんとうに経験した人が語らず
語ったのは知ったかぶりばかり

自分と相手の違いさえもう無く
生き死にの違いさえ感じづらく


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