東京の電車も
少し込んでくると
滅びの香りが
深く漂うようになった
小金が入ってくる
期待のあったうちは
まだごまかせたが
べったりした虚無が
もう誰の喉元でも
なまぐさい口を
開いている
この先
いいことはもう
なにもないと
わかってしまって
初老の心や
老い募った心が
血色の悪い
乾いた肌をして
しがみついている
吊革
かなりの不快にも
辛苦し黙り続け
行く先といっては
もう
衰え果てた鶏のように
生きたまま
ミンチにされてしまう
粉砕機の穴のなか
それなのに
ろくに声も立てず
まだ行くのだ
どこまでも
どこまでも
―といっても
もう終わりはそこだが
まだ行く
まだ行く
まだまだ他人に
悪すぎる人と
思われないようにと
じゃまな奴と
嫌われないようにと
生物としての悲鳴さえ
押し殺しながら
まだ行く
まだ行く
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