やわらかい雨に
湿りけに
救われて
救われたようで
ぼんやりと霧雨の野を見続けておりました
霧や霧雨を通してなら
世界はやさしく
美しく
いろいろなものは場所にやすらぎ
遠いもの
隠れているもの
消えていったものや
失われたものまで
微細な水粒のヴェールの隙につながって
すべてがある
来ている
そんな強い集結感が
やわらかく
あたたかく
漂って
ゆっくり
ゆっくりと
流れているのでした
しばらく此処に留まっていよう
澄んだ青い幽霊たちが
峠の見晴らしのいいところに
ずっと立ちつくして
何年どころか何世紀も
むこうの
そのまたむこうを
いつまでも見続けているように
かつては透明な
微細な
かたちをとったかと思えば
すぐに変形していく
水の素だったと
染み透るように思い出が来て
うれしいせつなさに
体の芯から指先まで悶えるようです
この悶えが
ああ、世界の本質ではないか
世界とわたくしの出会いの
本質ではないか
うれしさは今ふたたび強く熱を持ち
この悶えから
わたくしはふたたび
世界にむけた魂を
作り直そうと思いはじめました
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