2015年4月10日金曜日

呪春



うしろの正面だあれ
と戯れ歌しているあいだに
春の次の
春の次の
春の次の
春の次が来ていて
あたりにはもう
誰もいない
春のうすら寒さが今夜のお汁をすぐにも冷まします
吹雪にはならないだろうが
背から胴体の奥まで沁みてくる寒さです
冬よりよほど寒いさむい春の寒さです
もっと人にやさしくすればよかったなんて
思っていないのです ずいぶんやさしくしてきたから
自分を主張しすぎてはいけないなんて
思ってもいないのです 人の主張ばかり聞いてきたから
皆もっともっとはやく滅びればいいのに
居てほしい人たちは
あたりにはもう
誰もいなくて
春の次の
春の次の
春の次の
春の次が来ています
ずいぶんやさしくしてきたから
人の主張ばかり聞いてきたから
もてなかった顔が大穴となって寒さが流れ込むばかりです
もっともっとはやく滅びればいいのに
春も
夏も
たのしみも
よろこびも
うしろの正面だあれ
と戯れ歌し続けていくあいだに



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