環状線の下だけ
やや暗く
ひっそり静まっていた
ぼくらはようやく
息がつけるようだった
ぼくら…
かたちを成したこともない
未来の小さな水滴と
生まれるのなど
考えたこともない
大きな潤った空虚のようなもの
そして
ぼく
どこかから
逃げてきたわけでもなく
どこもかしこもが
つらくて嫌だというわけでもないけれど
たぶん
ずいぶん歩いてきたからだろう
ちょっと涼しい
暗いところで
息をつきたい気がしていた
やや暗く
ひっそり静まっていた
環状線の下で
ぼくらは
おしゃべりもせずに
目を見開いていた
蔭になったところや
環状線のはずれの
日当たりの強い明るみを
交互に見ながら
でも時どき
蔭や
日当たりのどちらかを
じっと見据えたりしながら
そうしてやっぱり
なにも
細かくきっちりとなんて
考えたりせず
あたまや心の中を
すっかり辺りの世界に横取りされたまま
呼吸をし続けていた
だから
ちゃんと生きていたとか
とにかくどうにか生きてきたなんて
主張するつもりはない
ぼくに
なにか中身らしいものがあったなんて
あんまり
信じてもいない
ようやく
息がつけるようだったから
そんな環状線の下に
入れたから
息をついただけ
息をしていただけ
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