たとえば
つき合いや同棲を
何年も
何十年も経ずに
結婚してすぐに子をもうけた夫婦
このふたりは
人間どうしがふたりで向きあい
ながい時間生活を共にしていく時に染み出たり
露呈してきたり
発生してくる
親しみ・融和・愛などという単語では
いかようにも解消しようのない
違和や断絶を
少なくとも子が離れていくまで
まったく経験しない
子はかすがいとも言うが
子は補助線であり
子は緩衝材
とりわけ子に問題があったりすれば
夫婦ふたりは
じぶんたちの岩盤やマントルを
じかにぶつけ合わないで済む
子が完全に離れた時
ふたりは
はじめて相手の“他者”に
じかに激突する
化学実験だ
実験者の手際により
いかようにも
危険度は和らげられるが
結婚してすぐに子をもうけた夫婦には
そうした手際を身につける機会は
ふつう
なかった
こうした化学実験に
じぶんの両親が落ち込んでいくのを
わたしは
補助線の役を
意識的に一切せずに
傍観した
彼らの性格や
行動が
彼ら自身の間の違和や断絶により歪んでいくのを
見続けた
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