2024年1月30日火曜日

幻灯


 

世の中は変わった

ずいぶん変わってしまった

というが

それほど変わってもいないところも

あるので

この道を行けば

ちゃんとあの駅に着くし

あの小径を抜ければ

小川が

まだある

小川ぞいに行けば

そう広くない墓地も

いまだに

そう広くないまま

ある

 

いつのまにか

音信のなくなっていったひとたちや

死んでいったひとたちと

また

ひょいと出会って

いっしょに

この道を歩いて行ったりしたい

 

どうでもいいことをしゃべりながら

あの小径を抜けて

そう広くない墓地へ出て

触れると冷たい

四つ葉を

数本摘んでみたりしながら

そういえば

以前会ってから

こんなこともあったとか

しゃべってみたい

 

そんなことは

絶対に

起こりようもなく

広大無辺といわれる無限の宇宙にあってさえ

二度とくりかえされることもない

とは知っているが

すぐにでも

ひょんなことから起こりそうな気がして

ぼくは見まわしてみる

この道に

ちょっと立ち止まって

あれらみんな

どこから投影された幻灯だったのだろう?

いぶかりながら

 





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