若いころは
無理にも人の目をみつめ
真摯なふりをして会話したのに
歳を重ねてからは
むしろ目を逸らして話す
そんな自分になっているなあと
気づく
だれと話していても
展開は見え切っている
結論にも
新しいものにも
言葉では行きつかない
ことに近ごろは
なにかと冗談に落とさないと
へんに真面目な人や
意固地な人と映る
会話さえ
お笑いなしには
できなくなってしまった国
上っつらのじゃれ合いが
過ぎ去ったバーゲンの広告旗のように
はたはた
はたはた
はためくほどに
募るさびしさ
冗談に落とし込みながら
こいつもダメかと
会話から魂を引き抜きはじめる
その場の言葉が
なめらかに滑っていくことばかりに
とりあえず気を配って
たいていの人が
言葉のいのちを終えていくらしい
生まじめに
ふつうの言葉で
ふつうの人たちが話しあいをする
外国の映像や本に
こんな時は
また手が伸びる
冗談や笑いは
仮面の口からばかり出て
あたりの人びとに
もっと分厚い仮面を付けさせる
こいつもダメかと
だれもが魂を引き抜きはじめ
抜け殻たちのさんざめきが
宴の場に響く
きらびやかな明りは
燐の明り
今宵も亡霊たちが
燐火の群舞を続けている
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