2014年4月25日金曜日

あゝほんとうにいつのまにかすっかりじぶんはいなくなっていて



風のそよぎ
こまかく
翻りひるがえり
動きつづける葉々
八重桜はまだ逞しく花弁を保ち
初夏の到来を支えている
向こうの屋根の瓦のひとつひとつに
海のおもてのようにひかりは輝き
止めてある車のボディーにも
かたちさまざまに
たくさんの小さな太陽たち

羨ましがられもしない景のなかで
これだけゆたかな
初夏のよろこび
ほかにはなにもいらない
自分さえ
と思いながら
足もとを見ると
踏まれてもいないタンポポの
黄の花ばなの群生

あゝほんとうに
いつのまにか
すっかりじぶんはいなくなっていて
だから
これほどしあわせなのだと
留まるのも
移動するのも
自在の
全方位の
五感六感として

風にそよぎ
こまかく
翻りひるがえり
動きつづけ
屋根の瓦のひとつひとつに
海のおもてのように輝き
止めてある車のボディーにも
かたちさまざまに
たくさんの小さな太陽となるひかり
かつて自分と呼び慣わしていた
全方位の
五感六感




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