2017年4月3日月曜日

あゝなにもかも一瞬一瞬の連鎖

 
ニュースでは満開だというが
近隣の桜はどこも五分咲き
せいぜいが六分咲きというところで
春の寒さの中で花見客たちは
江戸っ子よろしく風流を気取って
震えながらビールや冷酒を飲んでいる

十分冷えている桜の花々を
午後遅く冷やかしに歩き出ると
浮かれているというより
必死に浮かれようと集まって
努めている人々のいじましさは
どこか死を前にした宴に似ている

かなり咲き揃っているところでは
人々も群れ集っておしゃべりに興じ
おゝなんとニホンゴは盛大に大仰に
しゃべくりちらかされていることか
楽しそうなのはいいことに違いないが
しかしなんと束の間の光景に映ることか

すべてすべて過ぎ去りゆくことの速さよ
花見に興じようと努める人々を
ひったりと一様に覆うさびしい網が
今年の桜の元ではありありと見えてならない
その網が人々をザアッと攫っていく瞬間が
もうそこに見えているように感じる

あゝなにもかも一瞬一瞬の連鎖
今見えているものはすぐに過ぎ去り
次に来るものとてすぐに過ぎ去る
どうして今年はこれほど痛切に感じるのか
これらの光景もこの人々も桜も
もう今年の末にはなにひとつ残らないかのように



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