小さな蛾が
私のいない時に入って来たというが
怯えて家人は
潰してしまったそうだ
丁寧に抓んで外に投げてやればいいのに
と告げたが後の祭りだった
そう教えたところで
蛾を抓む勇気はないと言う
正直なところ
毒蛾以外の害のない蛾を
抓めもせずに無益に怯える人間など
自然界に生きる資格がないと思う
地球上に共存する動植物を
必要もなく無益に殺すようでは
人間はいつ自分たちが無益に無慈悲に殺されても
運命だの土地の精霊に対して文句を言えない
子供の頃のある晩のこと
家に飛び込んできたスズメガを
手のひらで包んで窓まで行って
夜の闇の中に放ってやったのを忘れない
スズメガの大きなやわらかい腹は
手のひらの中で驚くほど熱く
こうして独りの熱を抱えて生きている虫を
無碍に叩き潰すなどとんでもないと学んだ時のことを
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