2017年12月25日月曜日

外来物、留メ置キ、

[2001年3月]

友・美津邑葦の家では
外部からの侵入物がしずかに
おだやかに
しばらくの留メ置キを受ける。さほど広いわけでも
贅沢なわけでもない彼の借家には
玄関の右に勝手間(と彼の呼ぶ)
すなわち外来物留メ置キの小部屋があって、
自ら購入した物、送られ来た物、みな
とりあえずはそこに休息をする。

僕も外来物、留メ置キ、されようかネ
と入ると、装飾に一切の配慮ナシ、とはいえ
整然として物品は置かれ
閑かな仕事小部屋の趣きさえある
小さなソファがあり
テレビだのステレオだのもあった
ほう、どうしてここに、
と問うまでもなく
友・美津邑葦の宇宙構成の術も
世との付キ合イの術も
一瞬に腑に落ちた

通された居間には
島のように四畳半が広がり
その向こうは庭に伸びる明るい板張りである
黒い小さな円筒型の旧式石油ストーブが
板張りの端に置かれていて
小窓から橙の炎が見える
暖房はこの程度のものに限るよ、きみ
やっぱり火が見たいし
大き過ぎても便利すぎてもいけない
これで足りないほどひどく冷える日には
きみ、どこか震える体のまま
厚着をして耐えるのさ
───聞きながら 庭のサザンカを見る
緑葉に白の花弁、黄の蘂
なんとかろやかな優雅、と
驚きをあらたにする

黒塗り艶消しの板の上に
急須と茶碗、朱の厚手の皿には
菓子も盛られていた
酒にも食事にもまだ早いから
ゆっくりと茶を飲んで
話したり
黙したり
言葉というものは
ひととあることの無風、撓みを
ときおり彩りよく
かるく扱き混ぜるためにある
ときおり発されれば
言葉はよかった

それじゃあ、酒を
という刻
サザンカは闇にまぎれて、もう
白も黄も見えない

あそこにサザンカ、あったんだよな
と言うと
あそこにサザンカ、あるんだよ
と答えが来た


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