2018年2月19日月曜日

用事が終わってひとり銀ブラ



用事が終わって
ひとり
銀ブラ

といっても
寿司は食べたばかりだし
すぐにカフェなんかに入りたくもないし
日曜の雑踏の中を
わざわざ見るほどのものもなくて
やっぱり
山野楽器に行ってしまう

クラシックのCDを
あれやこれや
のんびり見るのもひさしぶり
知らなかった演奏や
懐かしい演奏は
近頃はYoutubeで済ましてしまうので
クラシックマニアとして
CDを見てまわるのも減った

もうなにも買うものはない
などと思いながら
冷やかし気分で見てまわるのは楽しい
国内生産盤なら
バーコードをかざせば
試聴できる機械が数台あるので
ひとつふたつ
というつもりで試聴してみるうち
数十枚を試すことになり
けっこうな時間が経っていく
時間がない
時間がない
とせっつかれながら
こういうところに落とす時間は
無限にあるような生き方が
魂の奥底の道徳律になっているらしいんだよ、カントさん

買ってまで聴きたいと思うものは
ほとんど海外盤なので
試聴できずに
いつも賭けることになる
音楽好きも映画好きも観劇好きも
けっこう賭博者だ
作品が始まってから
アチャー
となることがすごく多い
アチャー
が堆積しまくって
とんでもない数になりがちだが
ええい全部手放しちゃおう
と思いながら
聴きおさめをしたりすると
心に蘇ってくる
よき
アチャー
もあるから
趣味の世界というのはわからないもの

買った中には
二十年前や
三十年前に過激な演奏でならした
ドイツの古楽器演奏家の新盤もあったが
写真で見る顔が
ずいぶん円満になったと思ったら
やっぱり
ダメダメダメの演奏になってしまっていて
アチャー
なのであった

しかし
何人かはとんでもない演奏家を見つけることができて
悪くない銀ブラであった
コーヒーでも飲んで帰ろうか
と思ったが
家までは十五分であるからして
サッとメトロで帰る

帰りがけ
有楽町でちょっと寄った
阪急メンズは
いろいろ揃っていて便利な店だと認識し直し
TUMI
重くないバックも
けっこういっぱいあるんだなァ
などと感心して見ていたが
一流ブランドや一流めかしたブランドばかり置いているビルなので
それとなく見てまわりながらも
やっぱり
商品の質の実感よりも数万円高めになっているよなァ
との印象

こんな値段感触が銀座であり
アベノミクスとかいうインチキ値上げ工作の成果であり
格差拡大絶賛国策進行中の途中状況である
くだらないと思うが
この流れから身を引き離せないというのが
人間の宿命だろう
すっかりここから離れてしまうと
おやつも救命医療も縁がなくなってしまうのだし
人との軽佻浮薄な話題にもあまりに事欠くことになるし
そればかりか
心の中に寂しさが募り
方途も見失ってしまう気がしてくることになりかねない
自分はそんな連中とは違う
などと意気込んで孤高を気取る中高年が
しばらくクリーニングに出していないジャケットから
オヤジ臭をぷんぷんさせていたりするので
時代の中を生き
街を生きるというのは
なんともかんとも難しい

どの道を行こうとしても
結局
流されているだけか
流されない古風なフリに固執してみているだけの
結局流されっぱなしの
情報通ぶりか
インテリふうに
陥るだけのことである

傍から見れば
どれも軽佻浮薄
どれも
さびしい

この数千年
この数万年
ニンゲンというやつは
ちっちゃなポリスの中で
まこと
薄っぺらな
かっこ付けばかりしている
たったのひとりも
例外はいないし
例外にはなり得ない
すさまじい不自由さの中で
みな
成長した気持ちになってみたり
老いていくどうしようもなさに呆然としてみたり
走馬灯の影に
ひととき
なってみているだけ

それを人生と呼んだり
価値があったかのように思おうとしたり

それは
どうぞ
ご勝手に



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