大通りから一本裏に入ると
飲み屋が並んでいる通り
チェーン店が多い通り
そう細いわけではない通り
店の壁に男をもたせかけて
女が抱きついてキスをしている
人形のようにのびた両腕が
男の首にからまって
なんだか
いかにもだな
典型的な腕の伸ばしようだな
と思う
ふりかえり
ふりかえり
それを見ながら
他の店の前を通過して
大通りに出る細道に入ると
「本当に言っておくけど、
「きみ、マジですごい飲んだから…
「それを認識していないってのは
「本当、ダメだから
「ちゃんと言っておくから
「きみ、マジ、飲んでたから
ふたりずれのうちの
こう言っているほうは先輩なのか
後輩に向けて言っているのか
どちらもよろよろして
会社員ふたりが連れだって
すれ違っていく
そう遅くもない
都会の夜の
ふつうのウィークデーの
ほんの一瞬のこと
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