2018年10月21日日曜日

印象たち

 
列車の来るのを待ちながら
ホームにいて
目を開いてさえいれば見える
たくさんのもの
いろいろなものの
あゝ
なんという楽しさ

むこうのホームに入線した
すこし汚れた列車の
あの車両の長さの設定に至るまでの
設計士たちの想像や
さまざまな計算や
満たすべきだった条件の
数々
それをまだ
わたしが知らないでいたことの
怠惰

列車があのように汚れるまでの
天侯のうつりかわり
整備士や掃除係の努力と
不可抗力

大きな車輪の
円周の長さの決定や
鋼鉄の含有物のパーセント決定に至る
会議の積み重ねと
たぶん
決定後のある晩開かれた
小さな飲み会

車輪と線路のあの接点に
いったい
何キロの重量がかかっていて
列車の走り出す時や
走っている最中
それはどう軽減されるのか

そんなあれこれを思いながら
たゞ
ホームにいる
というだけの時間の
あゝ
なんという楽しさ

まだまだ
知らないでいてしまった
あまりに
多くのことの
あちこちでのざわめき
知っておくれ
知っておくれ
調べておくれ
調べておくれ
と誘ってきてやまない
ものたち
色たち
かたちたち
数量たち
数式たち
過去たち
物語たち

そして
尽きることない
印象たち



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