近くに住んでいるので
毎年
元旦には
靖国神社に行く
散歩に行くのであって
初詣はしない
だいたい
参詣の行列は
たいへんな並びようで
なんであれ
人が長々と行列しているところには
これっぽっちも
組みしない主義なので
正月の初詣の列に並ぶことはしない
遊就館の奥の展示室では
無料で
刀剣の展示も行なわれていた
こちらは
ガラ空きである
混んでいないところばかりに
吸い寄せられていく気質なので
自然と
遊就館の奥へ
わたしは
吸われていく
刀剣の展示室よりも
入口近くの展示室の壁に
戦没者たちの写真がたくさん貼られているのに
目を奪われた
パスポート写真よりも
ちょっと大きめの
たくさんの
顔
顔
顔
の写真が
いっぱい集められて
パネルにされ
何面にもわたって
展示されている
多すぎて
ひとりひとりの顔を
ほんとうにしっかり見ることはできないが
それでも
ひとりひとりの顔を
少しでもちゃんと見ようと
立ち止まったり
ゆるゆると横に進んだりして
見続ける
みんな
死んでしまっているんだ
みんな
どこかで
どのようにかして
殺されたり
息絶えたりした
顔だ
そう思いながら
見続けていく
現代の
そこらの日本人の顔と
まったく
変わらない
顔
顔
顔
無骨なのもいれば
細おもてもいる
イケメンなのもいる
ユーモアのありそうなおじさんもいれば
謹厳実直そうな士官もいる
どう見ても
兵士には向かなそうな
やさしそうな
繊細そうな顔もある
これらの
たったひとつの顔だけ持って
生まれてきて
しばらく生きて
これらの顔を
命といっしょに
この世に捨てていった人たち
みんな
死んでしまっているんだ
みんな
どこかで
どのようにかして
殺されたり
息絶えたりした
顔だ
見続けても
見続けても
あまりに見飽きないので
困ってしまった
すいません
まだ
生きている身としては
長々と見ていると
けっこう
疲れるんです
足腰
背
疲れるんです
そんなことを
思いながら
近くに住んでいるのだもの
また
見に来よう
と
思った
顔を見つめる
というのは
大事なことだな
とも
思った
死んだ人たちの
たくさんの
顔を見つめる
というのは
生きている人たちの
たくさんの
顔を見つめる
というのも
たぶん
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