数週間前には感じられなかった気温の低下のなか
静かなさびしい雨が降って
住んでいる建物の中庭に音を立てている
深夜なので
他には誰も聞いていないだろう
単調といえば単調だが
コンクリートに当たって弾き返るさまのわかる激しさに
すこし活気もあって
聞いていてみれば飽きることのない音でもある
ああ
これが今年の秋の音だ
と思い
過去のさまざまな秋をすこし思い出そうとしてみる
どの秋も
どの秋のどの日々も
そうだったように
この秋も
この秋のなかのこの夜という時間も
二度と戻っては来ないだろう
あたりまえのことをこうして思い
静かなさびしい雨の音を
飽きることなく
まだ
聞き続けている
住んでいる建物の中庭の
コンクリートに当たって弾き返るさまのわかる激しさを
今年の秋の
音の署名だと思って
飽きることなく
まだ
聞き続けている
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