明け方に入ろうというのに
まだまだ
夜のちからのつよい頃
夜は終わろうとしはじめるのに
まだまだ
ふかい暗闇が(たとえカーテンから洩れる
戸外の灯りが部屋のなかを薄ら明るくしていようとも
もののかたちの輪郭が見えていようとも
ものが見えるとか見えないというのとは違った
明るさや暗さとはべつのふかい暗闇が)
部屋のなかにある頃
そんな頃
ふと目覚め
起きてしまいもせず
すぐにはふたたび眠り落ちもできずに
横たわったままでいると
こころは
他のなににも比較しようのない孤絶そのものに
なってしまう
横たわっている姿勢と
夜の明けない闇と
動かないでいることとが
しずかに
しずかに
他のなによりもおそろしい孤絶を
どうしようもなさを
救いのなさを
こころに突きつけてくる
その孤絶や
どうしようもなさや
救いのなさは
しかし
今のものではない
夜明け前に目覚めて醒めている
この今のなかにあるものではなくて
いつの日か
かならず訪れる徹底的な身体の終末や
社会的な終末や
人間関係的な終末や
さらには
それまで自分だなどと呼んだり
思い込んだりしてきた意識の終末のそれら
まるで巨大な滝壺にむかって
止まりようもなく
ずんずん進行していく小舟に乗って
たいへんな速さで
ずんずん
ずんずん
迫ってくるばかりの
さまざまなものの終末と
それらにまつわるあれこれの
めんどうなことがらの
とほうもない分量の連続とかたまりとが
はっきりした予兆のように
すべてを無へと引き込む滝壺の奈落のうなりのように
夜でも
朝でもない
闇のなかに横たわるからだと
こころには
まだ実体を伴わない透明な使者のように
さきぶれのように
やってきてしまっている
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