郊外にむかう電車を待っている
もうすぐ電車が来る
太い柱がいくつも立って
駅舎を支えているのを見ている
すぐ後ろには
いかにも普通な
どこにでもいそうな
そんなオバサンが立っていて
やはり電車を待っている
モスグリーンのカーディガン
朱色がかったポロシャツ
黒ズボン
玉ねぎを思わせる顔
髪はひっつめ
いかにも普通な
どこにでもいそうな
そんなオバサンが立っていて
やはり電車を待っている
こんな光景が
後のち
この世の静かな幸せの光景として
あざやかに
じんわり思い出されるのかもしれない
たとえば
死の床で?
たとえば
老いさらばえて
ひとり寝をしている夜に?
それとも
すべてがもの寂しくなっていく
夕暮れの薄闇の中で?
もうすぐ電車が来る
この世の静かな幸せの光景
いかにも普通な
どこにでもいそうな
そんなオバサンが立っていて
やはり電車を待っている
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