2015年5月24日日曜日

この世の静かな幸せの光景



郊外にむかう電車を待っている

もうすぐ電車が来る

太い柱がいくつも立って
駅舎を支えているのを見ている

すぐ後ろには
いかにも普通な
どこにでもいそうな
そんなオバサンが立っていて
やはり電車を待っている

モスグリーンのカーディガン
朱色がかったポロシャツ
黒ズボン
玉ねぎを思わせる顔
髪はひっつめ

いかにも普通な
どこにでもいそうな
そんなオバサンが立っていて
やはり電車を待っている

こんな光景が
後のち
この世の静かな幸せの光景として
あざやかに
じんわり思い出されるのかもしれない

たとえば
死の床で?

たとえば
老いさらばえて
ひとり寝をしている夜に?

それとも
すべてがもの寂しくなっていく
夕暮れの薄闇の中で?

もうすぐ電車が来る

この世の静かな幸せの光景
いかにも普通な
どこにでもいそうな
そんなオバサンが立っていて
やはり電車を待っている



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