だれの生も傍からはわびしい
が楽しそうでもある
充ち充ちていそうでもある
暮れがた
道すがらの家々に垣間見える
小さな一家団欒の
ひとつひとつにも懼れおののくよ
盛りのさなかのさびしさ
だれもまだ欠けていないことの
あゝ、とほうもない不安
いまが最良の時
いまが最良の時
安かれ
この人びと
この人びとよ
安かれ
巨大な波のようなものがいずれ
ひと息に呑みに来るとしても
はやり病のような影がじわじわ
ひとりひとりを
引き摺っていくとしても
安かれ
この人びと
この人びとよ
安かれ
心を持ち続けていくことの
あゝ、なんという残酷
棄てても
磨り減らしても
こびりついている心の
なま臭いような
ほこり臭いような
甘臭いような
しがらみの煩わしいかったるさの
ヌルッとしたほの温かみよ
心よ
ものをわたくしをわびしみ
楽しげと眺め
充ち充ちと感じとり
しあわせの場を遠くから
外から
ひと括りにさびしむ
心の残酷
棄てても
磨り減らしても
こびりついて
あゝ、安かれ
安かれ
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