ほんとうに
すべてというすべて
たったひとつさえ
ほんのわずかなものさえ
大切なものなどないと
思い知るまで
人びとの喜劇は続いていくのだろう
とりわけ
大事にして力を注いできたもの
あんなにつよく抱きしめたもの
心の支えになるようだったもの
そんなもののすべてこそ
もっとも価値のないものだったと
思い知るまで
心こそ要らなかったと
価値を定める思いこそ歪みの最たるものだと
思い知るまで
それらすべてを焼く
焼却炉の前に
否応なく立ち尽し
すぐ次には
自分
と思い込んできた迷妄をも
火の中に投じられるまで
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