2018年11月10日土曜日

ある時点から剥がれ落ちさせて自ずと離陸させていくかのように


 
峰曽田村では
人を焼く
煙が
紅葉のだいぶ綺麗になってきた
低山から渓谷あたりを
這うように流れ
懐かしい
ものを
いっぱいに包み込んだ
滋味豊かな
寂しさに
あたりも心も
とっぷりと浸されて
いつも
そうなるように
わたしは誰だかわからなくなって
とうの昔に
誰でもなくなった
あの人たちの思い出の
蘇るまゝに
足元に
纏わりついてくる枯葉の
ほんの
細い陽光の
最後の束に照らされたところだけが
金というより
シャンパンゴールドに
きらめいて
サッとひかりの失せた後の
ひかりを思い出させ続ける瞬間が
すべらかな肌の
この世のものでない
ありえない
少年となって
すぅっと立ち上がり
はじめて
わたし他そう少数でもない者たちにとっての
世界
が始まるかもしれない
気配を
暮れがたの
段階の刻々速まっていく寒さと重ねあわせながら
ある時点から剥がれ落ちさせて自ずと離陸させていくかのように)
此岸に
忍び込ませてきている



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